歴史的な円安、購買力への影響は

2026年8月17日

 円安が止まらない。米ドル円の為替相場は7月下旬に一時1ドル164円に迫るまでに円安が進み、その後は163円台を行き来する展開が続いている。しかしその後日米による為替協調介入により157円台後半まで戻るなど極めて不安定な動きをしている。40年ぶりの円安水準だというがその背景には日米の金利差をはじめ、人気銘柄に外国株が並んでいる新NISA(小額投資非課税制度)の活況も影響しているとも言われている。そもそも振り返るなら日本は日銀による異次元緩和により円安・株高を後押ししてきたという背景があり、輸出に大きく依存する日本経済にとって円安をメリットと見る向きもあった。しかしここまで円の力が弱くなる、同じことだが外貨の力が強くなるとメリットばかりを強調する訳にはいかなくなる。
 かねてから指摘されてきたことだが円安では輸出やインバウンド需要の追い風となる一方でエネルギーを筆頭に調達コストもまた上昇する。円安とは端的に言えば「海外から買われる」状況だが買われるのは何も製品だけではなく民泊関係で話題になっている土地や会社株といったものも含まれる。今年4月には台湾の有力六角穴付きボルトメーカーが国内上場企業の株を5%を超えて保有したとして金融庁に大量保有報告書を提出したが、海外投資家が日本株を買いやすい環境であるのは間違いない。また価格競争力を理由に購入していた海外製品、例えばステンレス製ナットといった製品はこれ以上円安が進むとコストメリットを活かしづらくなるのではないだろうか。貿易統計の動向を見ると昨年11月より今年4月まで、今年2月除けばいずれの月も数量面で対前年比二桁減が続くなどねじ類の輸入は低調な状態が進んでいる。
 かつてリーマンショック直後に歴史的な円高水準が続いた際は、海外進出が相次ぎ国内産業の空洞化を招いたと言われた。その後コロナショックを契機にサプライチェーンの見直しが進み一部では国内回帰の流れが生まれたが、このまま円安が進み、“買われる”状態が続いたなら次に何が起こるだろうか。日本は少子高齢化が進んでいるとはいえ世界で見れば上位の人口数を誇る。高い技術力と品質を誇り、災害リスクがあるがインフラが整っており、政治的に安定しており何より国際的な信用力がある。それらに加えて物価が安いとなれば進出先にうってつけではないだろか。海外企業がねじ類を作るために日本へ進出するのは考えにくいが、仮に1ドル200円のような世界では話は根底から変わってしまうだろう。為替は経済活動における多くの前提を変えてしまう。歴史的な円安水準が今後どういった方向へ向かうのか、注視する必要がある。

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