光熱費再値上げ、雇用への影響を危惧

2024年5月6日

 原油価格の高騰やウクライナ情勢などを背景に、電気やガスなど光熱費の価格上昇が長年続いてきた。それが今年に入ってからは値下がり傾向になっている。政府が光熱費の値下げ補助政策として「激変緩和措置」を実施していたためだ。国民一人ひとりが何ら手続きすることなく、直接的に料金負担が軽減されていた。しかし、この緩和措置は5月で終了する。これでまた光熱費は一転、値上がりとなり、家庭はもちろん、製造業をはじめ企業も大きな打撃を受けかねない。
 大手信用調査会社が4月に行った「電気料金値上げに関する企業の実態アンケート」によると、電気料金の上昇分を販売・サービス価格に転嫁できない企業が半数を超えている。原材料価格の価格転嫁が優先され、電気料金の価格転嫁までは厳しいといった声が大半だ。何しろ、これまで実施されてきた様々なエネルギー料金の値上げにより、企業負担は相当なものになっている。このままでは夏以降もさらなる負担増を迫られ、収益環境が一層厳しくなる企業も増えそうな気配だ。
 そうなると、企業としては何としても光熱費を抑えたいところだが、業界を見渡せばSDGs等に積極的に取り組んでいる企業ほど「節電」を効率よく進めている。社内のエネルギー割合は主に照明・コンセント・空調で構成されているが、これらの節電に取り組むだけでも十分な成果を上げている。一例を挙げると、一時的でもオフィスに人がいなくなる場合は最後の人が電気を消す、照明設備を蛍光灯・白熱電球からLEDに変更する、空調ではフィルターの清掃を2週間に1回程度実施するなど。すでに取り組んでいる企業も多いだろうが、地道に続けるしかない。
 このような節電対策は、企業全体で取り組むため、全社員の協力が欠かせない。当然、全社員が協力して行える環境整備が求められる。ある企業では、退出時には消灯することを貼り紙などで全社員に周知したことで、各々節電意識を持つようになったという。一方であまり強要し過ぎると、オフィス環境の悪化や仕事のパフォーマンス低下に繋がりかねない。個々への配慮は不可欠だ。
 製造業にとっては、光熱費の高騰が続けば経費負担だけでなく、雇用への影響も懸念される。新型コロナが5類に移行したことでインバウンドが復活し、経済活動はほぼ正常化した。しかし、サービス業などと比べると製造業は大きな変化もなく、求人面でも温度差が出ている。中小企業は、実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)の返済が本格化し、厳しい状況が続く。節電だけでは対応できない光熱費や原材料費の高騰分は製品の価格転嫁で補い、まずは人材確保を優先したい。

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