デフレからの脱却、「日本製」考え直す機会に

2024年4月15日

 33年ぶりの高水準とされる今年の賃上げは国内産業にとって祝福となるだろうか。広く報じられている通り、日本労働組合総連合会(連合)が先月15日公表した春闘の賃上げ率は前年同期比1・48ポイント増の5・28%となった。先月22日に続けて公表した内容によれば中小企業の賃上げ率は4・5%となり比較可能な2013年以降最も高い水準になったとしている。コロナ禍の終息に伴い観光業や飲食業をはじめとした非製造業が回復の兆しを見せている一方、製造業については自動車業界における認証不正問題の影響などもあって力強さに欠けた状態が続いている。また世界情勢に目を向けるとイスラエルによるイラン大使館の攻撃により中東情勢の緊張が急激に高まっており予断を許さない状況が続いている。このように先行き不透明かつ停滞感が漂う状況ではあるが、国内では昨年に続く高い水準の賃上げによるデフレ脱却に注目が集まっている。
 (独)労働政策研究・研修機構が公表している主要企業春季賃上げ率の歴史的な推移を見ると高度経済成長期とされる1950年代後半からバブルが崩壊した90年代初頭まで概ね最低でも5%以上、特に60年代から70年代にかけては10%、20%という極めて高い賃上げ率が確認できる。しかし90年代以降は急速に2%台まで下がり、2000年代は1%後半台にまで落ち込んでいる。いわゆる「失われた30年」を経て低成長から脱しようとしているのが現状だが、前号の時評でも触れたが企業の成長には人や設備への投資が絶対的に必要である以上中小の賃上げを実現するには労務費の転嫁が欠かせないだろう。中小企業の賃上げについては昨年も見られた理由ではあるが、賃上げをしないと人材不足に陥るリスクが高まるため賃上げに踏み切ったという声が聞こえている。国としてデフレ脱却ムードに向かっていると言われたとて多くの経営者にとっては人件費の上昇は頭の痛い問題だというのが実情ではないのだろうか。少なくとも産業界の業界を見る限り一部を除けば昨年は決して好調とは言えない一年だったはずである。
 政府としては中小企業まで賃上げを波及させるため税制の改正や生産性向上を支援する補助金で支援していく方針を打ち出しているが、デフレからの脱却は良いものをよりコストを抑えて生産してきた「メイド・イン・ジャパン」のあり方を考え直す大きな機会になるだろう。そしてそれは企業に求められる要素もまた変化していくことが予想される。「失われた30年」からの脱却と共にコスト重視だけでなく新たな付加価値にコストをかける土壌が生まれてくることを期待したい。

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