労務費が価格転嫁の焦点に

2024年4月8日

 経済産業省の齋藤健大臣は3月27日に電機メーカーなどで集まる電子情報技術産業協会(JEITA)の会長など経営トップらと会談を行い、取引先の中小企業に対しての価格転嫁を要請した。
 齋藤大臣は中小企業庁の調査で電機業界のコスト上昇が進んでいるにもかかわらず、価格転嫁率が5割に留まっていると指摘。負担が中小企業にしわ寄せが来る構図はサプライチェーンの脆弱化につながり発注者自身に悪影響を及ぼすと懸念を示した。電機業界のサプライヤーである中小企業が求める価格転嫁を促した形だ。
 経済産業省は政府が進める賃上げ達成のためには、〝中小企業の価格転嫁が何より重要〟であることに注目している。中小企業と取引する組立産業の業界団体への価格転嫁要請はこれまでも行われてきたが、大臣自らが業界トップに働きかける取組みは、各産業で進めてもらいたい。
 今年の春闘では中小企業を含めた持続的な賃上げが焦点となっている。大手企業のみ先行した賃上げは、その賃上げ分を低い調達コストでカバーしようとする流れが働いてしまわないかと筆者は危惧してきた。「賃上げ達成には中小企業の価格転嫁」という構図がようやく出来上がってきたことは第一歩となる。
 そして、その価格転嫁で焦点になるのは労務費だ。これまでねじ・ばね業界では、材料高騰にともない鋼材値上げへの対応が価格転嫁の大きなウエイトを占めていた。しかし昨今では鋼材やエネルギー費の高騰だけでなく、人手不足による労務負担の増加や人件費の増加が伸びているにもかかわらず、これら労務費を製品価格になかなか転嫁できない実状があった。
 要因のひとつに価格交渉で取引先から求められる価格改定の根拠となるエビデンスの論理的算出が難しいためだ。年間の労務費コストアップ分を算出して、売上比率を考慮しながら、キロ換算何円値上げ、または製品価格から何%上乗せするといった考え方をとるのだろうが、企業によってその労務費の算出方法にはバラツキがあると見られる。
 公正取引委員会が公表している「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」では価格交渉で①原材料価格②エネルギーコスト③労務費(定期昇給、ベースアップ、法定福利費等)④その他―の内訳を示して金額を示す見積様式が添付されている。これに加えて、指針となる業界に特化した労務費の算出方法ガイドラインがあれば良いのではないか。
 労務費の価格転嫁なくして企業や経済の成長はないだろう。価格転嫁に向けた取組みを業界が先行して指し示すことで全体の底上げにつなげてもらいたい。

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