展示会は長期的なきっかけづくり

2022年6月20日

 本紙前号でも展示会特集を組んだが、東京オリンピック・パラリンピックも閉幕して東京ビッグサイト(江東区)がメディアセンターとして使用する為に使用できなかった問題も解決し、新型コロナウイルス感染症も今のところは収束に向かいつつあり、各展示会が例年通りの時期・いつもの会場で開催されるようになって、やっと〝普段〟〝日常〟が戻りつつある。
 前号の特集で出展する各社を取材するだけでなく、五輪・コロナ禍前には出展の常連だった企業と連絡する機会があった際に一歩踏み込んで今回は出展しない理由を聞いてみたが「五輪・コロナ禍を経て社内で見直しの機運があり今回は取りやめた」「ブースに社員を常駐させるのも普段の業務がおろそかになってしまう恐れがある」という意見もあった。
 また地方自治体、地域の企業連合体、公益財団法人等での出展料の補助が出る合同ブースでの出展も増えているようで、やはり単独でブースを構え出展するのは負担が大きいのだろう。2019年末から20年・21年・今年上半期とおよそ3年を経て取り戻しつつある〝普段〟〝日常〟はビフォアコロナでなくアフターコロナで別物だ。
 そんな中でも単独で出展する企業に話を聞くと次のように話していた。
 そもそも出展してすぐに見積もりや注文・購入に至る事を考えてはいない。製品・商品のラインナップを〝山〟とするなら、ラインナップの高品質・高価格帯は〝頂上と周辺〟、そうでないのは〝麓と裾野〟であり、注文・購入は〝登山〟。わが社の〝山〟自体を知らないユーザーになりうる層な企業な″登山客〟はまだまだいるはずで、配布するカタログやパンフレットは〝山のガイドブック〟であり、とりあえず〝山〟がある事を知ってほしい。
 そして〝今シーズン〟でなくてもいい、来年でも再来年でも、さらに急に〝登山〟する必要があるかもしれないし、今回は〝裾野〟、次回は〝頂上〟かもしれない。その時の為にユーザーに〝山〟の存在の記憶や事務所内に〝ガイドブック〟が残っていてもらえるように継続的に出展する方針。また同時並行で新製品開発・取扱商品の拡充で〝山〟を高く、〝裾野〟を広げていく事もしなければならない―。
 展示会出展に限らず宣伝というのは成果との因果関係が見出しにくいはずだ。よく「選択と集中」と言われるようになったが、これは経営環境が厳しくなりモノ・カネ・ヒトといった経営資源の余裕がなく次の一手を打ちにくくなっている時代を表しているのだろう。しかしそのような状況下でも「長期的なきっかけづくり」に取り組む姿勢にはいつか成果を残してもらいたい。

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