「知の継承」と「技の継承」

2026年6月8日

 我が国のねじ業界において、人材育成の重要性は年々高まっている。少子高齢化による労働力不足に加え、熟練技能者の高齢化も進み、技術や技能の継承が大きな課題となっている。こうした中で、現場を支える技能者と高度な専門知識を持つ技術者の双方を育成する取組みは、業界の将来を左右する重要なテーマである。
 今年度も(一社)日本ねじ研究協会による「ねじ大学校」の学生募集と、(一社)日本ねじ工業協会による「ねじ製造技能検定」の実施が始まる。前者は学術的な知識を備えた締結技術のエキスパートを育成し、後者は製造現場で活躍する技能者の技術力向上と客観的評価を担う制度である。
 ねじ大学校は現在、5期生となる技術者コースの学生を募集している。設計や製造技術、品質管理、研究開発などに携わる人材が体系的に締結技術を学び、卒業時にはMFT(Master of Fastening Technology)の称号を取得できる。修了生は企業や業界の技術的中核を担う存在として期待されており、知識の継承と技術革新の橋渡し役となることが求められている。
 一方、ねじ製造技能検定は、製造現場の技能を評価し認定する制度として着実に実績を積み重ねてきた。今年度は昨年度に続いて1級試験の実機試験を実施するとともに、新たにナットフォーマー工を追加し、ボルトフォーマー工、ナットフォーマー工、ローリング工、タッピング工の4職種体制となる。実際の生産設備を用いて技能を評価する仕組みは、現場の実力を的確に測る制度として意義が大きい。
 両制度は一見すると異なる取組みのように見えるが、目指す先は同じである。ねじ大学校が「知の継承」であれば、ねじ製造技能検定が「技の継承」だ。
 理論と技能の両輪がそろってこそ、日本のねじ産業の競争力は維持される。企業にとっても、自社人材の成長や定着を促す有効な教育機会となるはずだ。
 人材不足が深刻化するなか、教育はコストではなく将来への投資である。
 企業にとっても、自社人材をこれらの制度へ積極的に送り出すことは、技術力向上だけでなく従業員の成長意欲や定着率向上にもつながる。特に中小企業では、社内だけで高度な教育機会を提供することが難しい場合も多く、業界共通の教育インフラを活用する意義は大きい。
 設備やシステムへの投資はもちろん重要だが、最終的に産業を支えるのは人である。業界全体で人材育成の重要性を再認識し、より多くの企業と若手人材がこれらの制度を活用することを期待したい。未来のねじ産業を築くための基盤は、人づくりにほかならない。

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