製造業のBtoCに目を向けてみては

2022年2月14日

 中小製造業のBtoCビジネスが活況だ。大量生産を主体にサプライチェーンに組み込まれたこれまでの既存ビジネスに加えて、ターゲットを一般市場に見据えて加工技術を活かしたユニークなアイデアが業界内外で登場している。
 対法人の安定した売上の柱があり、新ビジネスに注力できる余力があればこそのビジネスかもしれないが、小回りのきく中小製造業だからこその事業でもあり、大手が参入しづらいブルーオーシャンの側面もあるのがこの分野だ。
 本紙新年特集号のアンケート調査において、コロナ禍経済脱却に向けての取組むことを聞いた回答の中で、「利益追求」や「価格転嫁」に次いで多かった回答が「新分野の販売先拡大」だった。新分野とは既存市場を新たに開拓していくことだけではなく、ニーズがあるのであれば市場を自ら作ってしまう考えもあって良いはずだ。
 精密鋳造をコア技術とするメーカーでは、アニメキャラクターのコラボ製品やプロレスラー・アスリートの手形を再現した鋳造製品を、自社専用サイトから一般販売している。精巧で重厚感のある仕上がりは専門メーカーならでは。専用サイトには数万円という価格の商品が並ぶ。
 コロナ前よりアウトドアが流行しているが、住宅金物メーカーでは、こうしたアウトドアギア製品を次々と開発している。ねじの機能を活かして木板などのあらゆる場所に、穴をあけずにフックを付けられるというアイデア商品だ。これらを独自のブランドサイトを立ち上げ販売している。
 ファスナーの加工技術を活かすことができ、BtoC、BtoBともにビジネスチャンスにもなり得ると筆者が面白く感じているのが、3Dプリンタの精密ノズルだ。ノズルは材料の樹脂を押し出す機構部の先端につく部品で、摩耗するため付け替えることができる消耗品だ。真鍮製で交換するためのねじ加工が施されており、高い精度の貫通穴、テーパー状の先端があり、一見するとファスナー業界でよく目にするような形状をしている。今後3Dプリンティング技術の進化によって材料も多様化してくると、精密ノズルを金型や治具のように都度最適なものに交換するニーズが増えてくるだろう。高い精度のファスナー加工技術が集約された精密ノズルは成長するニッチ分野として期待できる。
 ファスナー業界でもアウトドア、自転車、釣り、玩具、模型、ドローン、ロボット―などをキーワードにしたBtoCビジネスを取材する中で見つけることができる。補助金の充実など新ビジネス展開をスタートする好機となる今、視線を変えてみるのも良いのではないか。

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