展示会の課題と展望

2026年6月22日

 本号の特集の通り、間もなく東京ビッグサイトで「ものづくりワールド[東京]」が開催される。時評子も毎年多くの展示会を取材しているが、改めて考えさせられるのは展示会の意義と今後の在り方だ。
 2020年代前半は新型コロナウイルス感染症の拡大により、多くの展示会は中止や延期、オンライン開催を余儀なくされた。しかし、その中でも展示会という仕組み自体は生き残った。これは決して当たり前の事でなく、後々まで評価されるべきだ。コロナ禍をきっかけにオンライン会議やウェブ商談が普及し、企業情報や製品カタログも容易に閲覧できるようになった。一方で、ネットにも限界がある。検索は便利だが、自分が探している情報へ辿り着く手段であり、表示される情報も各種アルゴリズムの影響を受ける。そのため想定外の技術や製品と出会う機会は少ない。展示会では違う。目当ての企業を訪問する途中で別のブースに立ち寄り、新たな技術や用途を知る事もある。こうした偶然の出会いはリアル展示会ならではの価値だ。
 また展示会は情報収集だけでなく関係構築の場でもある。企業訪問には事前調整が必要だが、展示会ではブースを訪ねるだけで会話のきっかけが生まれる。売り込みたい側も情報収集したい側も、比較的低いハードルで接点を持つ事ができる。
 一方で出展には費用や人員の確保が必要であり、新製品や新技術の発表時期、さらにカタログ更新を合わせる企業も多い。来場者も時間や交通費を負担して会場へ足を運ぶ。近年は企業紹介の延長線上のような展示や、説明員の少ないブースも見られ、出展する以上は何を伝えるのかがより重要になっている。
 展示会のテーマ設定も重要だ。地方展示会では製造業だけでなく食品や伝統工芸品など幅広い分野が集まる事も多い。地域振興には有効だが、特定分野を目的とする来場者には客層が広がり過ぎる面もある。その一方で都市部の大規模展示会はテーマを絞り込みやすく、目的意識の高い来場者を集めやすい。
 もっとも近年のねじ・ばね企業は、自社が何を製造しているかよりも、どの業界・ユーザー層に売り込みたいかを重視する傾向が強い。自動車、医療機器、半導体など対象分野に応じて出展先を選び、「ねじ・ばね」の区分ではなく金属加工など別分野で出展する企業も珍しくない。
 だからこそ、ねじ・ばねをテーマとした展示会内での区画の存在意義も改めて問われている。関係者が集い、情報交換し、新たな関係を築く場として求心力を維持できるか。ネットが普及してもリアル展示会は無くならないだろう。しかし開催するだけで人が集まる時代でもない。展示会ならではの価値を高め続けられるかが、今後を左右するだろう。

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