日本銀行が今月1日に発表した9月短観によると大企業製造業の景況感は6四半期連続で改善する結果となった。業況判断指数(DI)はプラス24で前回の6月調査から2ポイント改善しており、短観によると製造業は中堅企業(プラス6、DI23)、中小企業(プラス5、同14)もプラスとなっており規模を問わず改善の兆しが見られることが分かる。
国内製造業はAI需要を受け半導体向けといった一部の業界では盛り上がりを見せるも、コロナ禍以降特にここ2年ほどは米国の関税政策や中東情勢の影響を受けて力強さに欠ける状況が続いていた。この発表を受けてようやく明るい兆しが、と喜びたいところだが短観は大企業製造業の先行きについて悪化を見込んでいる。電気料金や人件費といったコストアップが続く中で先行きに慎重な見方が残っていると受け止めるべきか。いずれにしても安心するのはまだ早いということだろう。
景況感は相変わらず不透明感が拭えないが、その一方で中小企業の事業承継に大きな影響を与える出来事が持ち上がっている。国税庁は非上場企業の株式に関する相続税と贈与税の評価方法について、制定以来およそ60年ぶりとなる抜本的な見直しを進めている。今後適用が見込まれる新ルールでは会社規模による区分、そして同業の上場企業の株価を参照する類似業種比準方式について廃止を含む見直しが検討されている。具体的には原則として直前期の利益が評価に強く反映される従来の仕組みを見直し、過去数年間の平均利益を基礎に将来の収益力として反映させる残余利益方式が検討されており、意図的な評価額の調整によるいわゆる節税スキームを難しくする狙いがあると見られている。
新ルールの下では収益性の高い、つまり業績の良い企業は株価も高く評価されるが結果として事業承継のハードルが上がるのではないかという懸念の声が上がっている。いずれにしても現状は検討段階であり全貌が明らかになっている訳ではないが、今後は新ルールに変わる前にM&Aといった選択を含む形で事業承継を済ませようとするケースが増えてくるのではないか。
在阪ねじ企業を見ると商社・メーカーのどちらも主に3代目への世代交代があらかた進んでいる印象を受ける。しかしそれでも承継の問題を抱える企業はまだ決して少なくないはずだ。先行き不透明な経済環境下でコスト高への対応に苦慮する中、経営者はさらに事業承継における税務リスクという新たな課題とも向き合わなければならない。新ルールの検討が着実に進められている中、ねじ業界を含む国内中小企業にとって承継計画の策定が今まさに急務となっている。