来年は“省力化イヤー”になる

2023年12月4日

 前号1面トップで既報した通り経済産業省の令和5年度の補正予算案の事業概要が明るみとなった。このうち「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」と「中小企業 省力化投資補助事業」にそれぞれ1000億円が盛り込まれる。来年は「省力化イヤー」と呼べる年となるのではないか。
 企業の省力化に焦点を当てた補助金事業は初めてであり、人手不足の深刻化と賃上げ達成に向けて、国がいよいよ省力化に本腰を入れたと見て良いだろう。次年度も引き続き同事業に予算が盛り込まれると予測される。人手の足りない中堅・中小企業向けにロボットや省力機器の導入促進を支援する事業であり、大規模投資向けの前者と小規模投資向けの後者の補助金が用意される。ねじ・ばね企業も自動化を促進して人手不足を補う好機として、また賃上げを達成して貴重な人財を確保する好機としたい。
 「中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金」は、省力化等で労働生産性の向上と事業規模の拡大を図るために、工場の拠点新設や大規模な設備投資に対して補助を行う。国が民間企業に定額の補助を行い、民間企業が中堅・中小企業に対して投資額3分の1を補助する仕組みをとる。補助上限額は50億円、投資下限額は10億円と大規模投資向けの補助金となる。企業が共同で集まるコンソーシアム形式で参加企業の投資額合計が10億円以上となる場合も対象となる。この場合は一定規模の中堅・中小企業がいることが条件となる。
 「中小企業省力化投資補助事業」は、これまでの中小企業等事業再構築促進事業を再編した事業となる。IoTやロボットなど人手不足解消に効果がある汎用製品をカタログに掲載して買い手側の中小企業が選択して導入できる仕組みをとる。補助率は2分の1。補助上限額は従業員数5名以下の企業に200万円、従業員数6~20名に500万円、従業員数21名以上に1000万円とする。賃上げを達成した場合はさらに上限額が引き上げる。
 ITやロボット、省力機器メーカーは自社製品が補助金の対象となるため経済産業省のカタログ掲載への申請に注目が集まるはずだ。まだ明るみとなっていないがカタログ申請には業界団体との連携がとられると見られる。
 製販業界ともに人が介在する工程はいまだ多くを占めている。ハード・ソフト両面において自動化を確立して、人的資源を人にしかできないコア業務に集中させたいニーズは今までにない程高まっている。また人材不足は日本だけでなく先進国全ての深刻な課題となっている。ロボット・自動機器に強い日本が世界に先駆け〝省力化モデル〟の社会を指し示して欲しい。

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