手間はコスト、手間は付加価値

2023年11月6日

 インボイス制度が始まって早1カ月、事業主が取引を行う際の消費税の税率や税額を正確に把握、免税事業者の消費税の納税に関する是正、そして軽減税率の対応を目的にした制度だが、公正な税負担の為とはいえ開始前に各種セミナーが開かれたり、取引先間の番号の連絡からそもそも登録しているかの確認、開始後は領収書の番号記載・確認や経理上の手間が煩雑になりつつある。
 手間は金額ではなく専ら掛かった時間で換算されるが、カネに限らずモノ・ヒト(時間・労力)もコストに変わりないと思わされる事例だ。
 形のないサービス業に対して以外は「サービス=手間は無料」という認識・思考はありがちだが、サービス業に限らず農業・工業(製造業)によってつくられた身の回りのあらゆる物品、その裏には手間が掛かっている事を忘れてはならない。
 ねじ・ばねも元々は鉱物(金属、一部は石油由来の樹脂)であり、それを採掘して、熱や電力をかけて精錬して、用途に応じた線径の線材にして、ねじ・ばねメーカーが用途に応じた形状に加工して、さらに熱処理や表面処理が行われる。
 勿論ねじ・ばね単体では用を成さないので、メーカーから出荷されればサービス業となる卸売・商社が在庫として保管するが、出荷が明日の場合も何年先となる場合もありその期間の保管や販売に関する業務という手間も必要だ。そしてその先には製品を構成する部品として組み込む作業があり、出荷・流通の手間もかかっている。原材料が形を変え消費者の手元に届くまでの価値の多くは手間で構成されているといっても過言ではない。
 そして手間はコストでもあるが付加価値でもある。
 さらにいえば手間を減らして効率的に業務をすれば利益分は増えるのはメーカーも卸売・商社も変わらない。メーカーは加工が手間であり付加価値といえるが、手間が掛かる最たる例は段取り替えであり大ロットで生産した製品は安く、逆に小ロットなら高い加工賃となるはずだが、それをユーザーに認められるかが課題だ。卸売・商社は加工こそしないが保管と供給こそが付加価値であり、ユーザーが事業所内に倉庫を構えて管理する事の代行業務として価値が生じ、突き詰めると倉庫内のピッキング1歩あたりにどれだけのコストが掛かっているかを考えようとする動きもある。
 ウクライナ・ロシアや中東の紛争等の影響もありあらゆる物価が上昇しているが、ユーザーが「原材料価格の上昇分だけ認める」という事例は認めがたい。供給されるねじ・ばねにはモノだけでなく物価上昇の影響を受けて生活しているヒト(事業者)の手間が掛かっており、その値上げ分も鑑みてもらえるようにしなければならない。

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