国内回帰の動きが鮮明になるか

2023年10月16日

 コロナ禍で急増した国内の製造業における工場や製造拠点の閉鎖や縮小の動きが21年をピークに鈍化している。この動きは国内回帰の方向へと鮮明に変わりつつあるのか注目される。
 東京商工リサーチの調査によると2022年には、上場メーカーのうち28社が国内の工場や製造拠点の閉鎖や縮小を開示し、前年に比べて12社減少した。そして、2023年8月末までの開示数は14社であり、減少傾向が続いている。
 同調査の上場メーカーの国内工場や製造拠点の閉鎖・縮小に関する開示データを見ると、コロナ禍前の19年には17社が22拠点を閉鎖・縮小したが、20年には27社が37拠点、21年には40社が45拠点と急増した。しかし、22年には28社が37拠点に減少し、国内回帰の兆候が現れている。
 この国内回帰の動きには、複数の要因が影響している。20年と21年にはコロナ禍により製造拠点の閉鎖や縮小が急増したが、その後、円安進行と経済活動の再開が起こり、国内回帰の傾向が顕著になっている。また、ドル急騰やロシアのウクライナ侵攻などの国際情勢も、日本企業が海外での生産を見直す刺激となり、製造業は国内拠点の維持と強化に焦点を当てているといえるだろう。
 産業別に見ると、20年と21年は主に重工業に閉鎖や縮小が集中したが、22年には食品関連、繊維、パルプ・紙など、消費者に近い分野での動きが目立った。23年8月末までのデータでは、製造拠点の閉鎖や縮小がピークアウトし、社数ではコロナ禍前の19年を上回る可能性があるものの、拠点数は同水準で推移している。内需の伸び悩みと円安の持続により、工場の縮小や再編は今後も不透明な状況が続く見通しだ。
 こうした製造業の国内回帰の動きが国内サプライヤーの需要拡大の好機につながるかが注目される。中国やASEAN等は人件費の上昇により、日本国内での生産コストに近づきつつあると言われている。国内回帰した大手メーカーは日本国内のサプライヤーから現地調達するメリットが当然生まれてくるだろう。
 ファスナー業界でも空調機器大手メーカーが関東圏に初めて大型生産拠点を構えることに需要拡大に向けた明るい材料として捉える見方があった。また海外で作られていた案件の見積りが国内ファスナーメーカーに流れている動きも見られる。これら見積りは海外水準でまだ安いという声を聞くが、時間とともに受注獲得に見合う水準に近づいてくる可能性はある。
 コロナ禍の影響により製造業の国内回帰が進行しており、これには通貨の動向や国際情勢も影響を与えている。今後も内需や為替などの要因により、製造業の国内回帰が続くと予測される。

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