業界の次世代が示す経営の在り方とは

2023年8月21日

 本紙では夏季特集号を皮切りに業界各社の変革そして挑戦に焦点を当てた不定期連載を開始している。本連載以前より社内制度や組織体制をどのようにして変えていくかという話題に触れる機会があったが、そして以前にも小欄で触れたがねじ業界でも特に若手経営者ほど「チーム」や「(社内の)雰囲気」「(職場の)環境」という単語に敏感であるという印象を受ける。ここ数年コロナ禍に見舞われたこともあってそもそも「個に頼る」という姿勢自体大きなリスクを孕むものと認識された側面があるのは間違いないが、時代の移り変わりに伴い職場環境や働きやすさといった数値で表現するのが難しい要素に目を向ける経営者が増えたのは確かだ。メーカーはもちろん商社でも入出庫を行う現場の作業環境に目を向けたり、毎日業務を行うオフィスの快適さを追求したり、あるいはコミュニケーションを何よりも優先するためワンフロアの事務所にこだわったり、と各社で方向性は様々だがモノの流れはもちろんコト(事・言)がより効率よく適切に流れるよう努めているように見える。今ではすっかり馴染みとなったリモート会議システムも、グループウェアも「コトの改善」に貢献するシステムとして捉えることができるだろう。
 もちろんこうした変化はねじ業界だけでなく国内のあらゆる産業で起きているもので、それは「会社はどうあるべきか」という根本にある価値観について政府主導による働き方改革を受けてゆっくりとしかし着実に変化していったのに加え、少子高齢化に伴う労働人口の減少により経営者は今の時代を生きる労働者の声をより注意深く拾い集めていく必要が生じているというような、労使のパワーバランスが労働者側に傾いているという現実も考慮する必要があるだろう。ロボットや業務システムを導入して省人化を図ろうとしても最後は必ず人の問題に行き着く。少し文脈が異なるがある台湾のナットメーカーは生産合理化のため最新の圧造機を導入しようとしたが、「ベテランのオペレーターが『使い慣れた機械の方が良い』と言い首を縦に振ってくれなかった」と苦笑いしながら話してくれた。設備にしても業務システムにしても使用者が納得してくれなければ無用の長物になりかねない。そのためには現場との擦り合わせやきめ細やかなコミュニケーションが欠かせないが、現場から意見が上がってくるのをただ待つのではなく自ら現場まで降りていって声を拾い集めるのが次世代の経営者達が述べる「ボトムアップ」の姿により近いように思う。連載では若い層だけでなく様々な世代の経営者から時代の変化に対してを感じ、何に取り組んでいるのか幅広く紹介していく予定であるため是非ご期待いただきたい。

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