台湾専門展に見る、鋲螺産業の行く末

2026年5月18日

 「台湾国際ファスニング見本市」(Fastener Taiwan)が4月22日~24日にかけて台湾・高雄市で開催された。世界最大級のファスナー(ねじ類)専門展として知られる同展は、毎回世界からバイヤーや業界関係者が集まる国際色豊かな場として知られている。そして今回会場で多く聞かれたキーワードを3つ挙げるとしたら「関税」「CBAM」そして「AI」となるだろう。
 台湾はファスナー産業に限らず輸出に依存する傾向があり、最大の輸出先である欧米の動向にこれまでも大きく左右されてきた。台湾にとって米国の相互関税、欧州の炭素税への対応は大きな課題となっており、会期中行われた講演の中では欧米市場を「関税や制度に守られた成長市場」と評価する一方でアジア圏については競争の激しいレッドオーシャンと位置付けていた。ある台湾メーカーは政府から輸出税の還付などで補助を受けている中国企業の存在を明確に脅威と見なしており、「台湾メーカーは団結しないと潰れてしまう」と危機感を露わにしていたのが印象的だった。
 AIによる生産性向上は台湾独自の課題ではないだろう。高齢化に伴う働き手の不足、設備の老朽化、事業承継の問題など日台の鋲螺業界は似たような課題を複数抱えている。また聞くところによると半導体関連企業が高雄方面へ拠点を作ろうとしているため、その影響を受けて地価が高騰しているという。近年台湾企業によるベトナム進出の流れが散見されているが、ある建築用ねじメーカーはベトナムに20万平米の土地を確保したと話していた。かつては関税回避のためマレーシアなどに進出する企業がいたが、単にコスト面だけでなく地政学リスクの回避に加えて土地の確保を目的としているように見えた。
 日本市場へ目を向ける台湾企業も見られたが、日本の少子高齢化を踏まえた計画を打ち立てている点が非常に印象に残った。日本国内では後継者不在などによる中小モノづくり企業の廃業が続いているがこのまま廃業が続けばモノが手に入らない、必要とするのに誰も作っていないという事態が訪れる可能性は大いにあるだろう。そうした際に市場の縮小を放置する訳にもいかず、海外からの調達を検討するというのもまた大いにありそうな話だ。台湾に限らず海外メーカーが日本へ進出する可能性というのは、鋲螺業界の動向を見ていると決してあり得ない話などではないだろう。
 日本と台湾では産業構造をはじめ事情が異なるが、国内需要が見込めないなど似ている点も多い。台湾は日本の鋲螺業界(の一部)を映す鏡であるとは言えないだろうか。業界の課題や今後の可能性を探る場として同展は今後も重要な催しであり続けるものと思われる。

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