ようやく暑さが和らいできたが気付けば今年も年の瀬が見えてきた。2026年はまだ終わってはいないが、今年起きた大きな出来事と言えばやはり中東情勢だろう。一時の危機的状況からは脱したとはいえ未だ解決には至っておらず、ホルムズ海峡の封鎖は日本をはじめ各国の経済活動に大きな爪痕を残している。日用品や食品を含め広い範囲でエネルギー価格の上昇を受けた値上げの動きが見られており、不透明な情勢と同様に値上げもまた常態化しつつある。金融環境を見ると円安・株高の状態に変わりはなく、日米の協調介入によって一時円高方向に振れたが9月上旬時点では再び1ドル=160円台に戻ってしまっている。現時点で今年の政治・経済環境を総括するならば、「地政学リスクに端を発する物価高と是正困難な円安が常態化した不透明な状況が続いた」と言えるだろう。
このような中、鋲螺業界をはじめ産業界の動向を見ると半導体関連や本紙前号でも触れた工作機械関連といった特定の分野は盛り上がりを見せている一方で鋲螺製品の主要な需要家の一つである建設・建築業界は人手不足や資材価格の高騰を受け厳しい状況が続いている。「2024年問題」に端を発した働き方改革を受けて施工日数が延びる傾向にあるのに加え、9月上旬に米国財務長官が円安是正について異例の発言をしており今後金利の上昇が警戒されるのは間違いないと思われる。他方、日銀の調査によると大企業製造業の景況感は5四半期連続で改善しているとのことで、製造業を取り巻く需給環境は良い方向に向かっていると見られるが先の中東情勢をはじめ一企業では対処できないリスクが多く、多くの中小企業経営者にとっては難しい経営判断を迫られているというのが実情だろう。
不確実性が常態化した時代だからこそ、外部リスクに左右されない強靭な経営体質への脱皮を果たせるかどうかが来る2027年以降の企業の明暗を分けるのではないか。そして大きな外部リスクは動かせずとも、組織で働く「人」に関しては我々にはできることがあるはずである。在阪ねじ企業を見ていると特に3代目の経営者は組織のあり方や働き方の見直しを通じて「いかにねじを売るか」ではなく、「いかにねじを売る組織を作るか」を考えているように見える。制御できないモノではなく、対話できる人に焦点を当てるのはリスクヘッジのあり方として道理に適っているとは言えないだろうか。人という確固たる基盤を築くことこそが不透明な未来を打ち破り、次代の鋲螺業界を照らす確かな道標となるはずだ。