道路利用税を創設した場合の悪影響

2022年11月21日

 政府・内閣府の税制調査会は10月26日に行った総会で、自動車関連の税制審議を実施し、税収の減少にともなう新たな財源のひとつとして「走行距離課税※道路利用税」導入を検討課題に挙げ、これに対し野党だけでなく与党にも物議・反発が起きている。
 基本的には自動車を対象としているが、自動車や燃料に対してでなく「移動という行為」に対し課税する事の意義はあるのか。まず、新型コロナウイルス感染症拡大の前例で人の移動、さらにいえば物品の輸送に制限が掛かるといかに経済に悪影響を及ぼすかは証明済みだ。その際にも議論となったが憲法における「移動の自由」に抵触も考えられ、パンデミック等の非常事態・緊急事態としてなら理由となりうるとしても、平時であり司法の解釈次第では憲法違反とされる可能性もあるのではないか。
 そして「道路利用税」に限らず料金を徴収・課税をしてきてどうなったか。そもそも日本最初の名神高速道路をはじめ、多くの高速道路は徴収した料金で建設費用が償還されたら無料化の予定だったが、未だされていない。このような問題に対し2003(平成15)年の第43回衆議院議員総選挙において、かつての民主党は「高速道路無料化」をマニフェストに掲げ実際には達成されなかったが、その際の検討において経済的に好影響としても環境負荷が危惧されたが、加速・減速が少ない高速道路はエコドライブに繋がるとして、経済と環境の両立も期待された。
 一方、道路でなく自動車単体には所有するだけで自動車税や自動車重量税、走行させる為の燃料に対してはガソリン税、さらに燃料単体だけでなく掛けられた税金も含めて消費税が掛けられており二重課税の見解もある。
 既に移動する為の設備(自動車)や施設(道路)に対し様々な料金・税金が掛けられている。人の移動に対してはオンライン化でテレワークが推進されて、出来る事・出来ない事が分かりつつある。物品の輸送に対しても、食料品ではスローフードのように地産地消が提唱されているが、様々な食料品を消費する現代的な生活は気候風土の制約があり限界がある。そして工業製品はまとまった資源=原料を集約して加工する大量生産方式が基本であり、さしづめファストインダストリアルプロダクツでないと逆に効率が悪く、輸送コストは幅広く原価に跳ね返ってくる。
 そしてねじ・ばね業界のユーザーで主要産業の自動車産業。EVシフト推進の過渡期だが、ガソリンを使用しないという利点が「道路利用税」で失われれば成長産業の成長が阻害されかねない。「道路利用税」は経済・産業あらゆる面に悪影響を及ぼすはずだ。

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