深刻な人材不足、企業のあり方見直す機会に

2020年1月12日

 人材不足が産業界に大きな影響を及ぼしている。そしておそらくはねじ業界だけの問題ではないだろうが、人材不足だけではなく加工機等の設備そして材料といったモノの面においても不足に苦しむ声が多方面から聞かれる。特に昨年秋口からは高力ボルトの不足が問題となっているほか材料はタイト感が強まっており、ある関係者からは「この先仕事が増えようとも材料が入ってこなければどうしようもない」というぼやきの声も飛び出した。 
 しかし昨年は度重なる自然災害や米中による貿易摩擦などマイナス材料がありながらも景況は概ね回復基調にあり、まだ先の話ではあるが2025年に大阪万博の開催が決定するなど明るい材料もあった。
 景気に関しては明るい話題もある一方で、こと人材不足に関しては見通しが立たず年々悪化していく一方ではないか。特定の分野における深刻な人手不足を背景として、政府は外国人就労者の受け入れを拡大する方針を決めている。しかし先の時評においても触れたように安価な労働力の受け入れが直ちに問題を解決するとは思えず、仮に受け入れたとしてもコミュニケーションの難しさから却ってコストが増加する可能性もある。
 スイス人作家の「我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった」という言葉が人口に膾炙する中、今年4月からは有給休暇の取得を義務づける「働き方改革関連法案」が順次施行される。業務内容の見直しや生産性の向上が企業の宿題となるのは間違いないだろう。
 昨今では業界においてもロボットを活用した省人化やIoTによる生産管理を試みるケースが増えてきた。
 またより自由な働き方を促すオフィスの設置やロゴマークの制定等による企業ブランドの再開発、CM放映といった取り組みを通じて人材の確保及び定着を図る企業も出てきた。いわゆる「働き方改革」の一例としてあるメーカーではフレックス制を採用しており、互いの業務が分からなければ仕事が回らないことからコミュニケーションが活発になり社内の風通しが良くなったという。メーカーでフレックス制を採用している企業は珍しく、視察に訪れたユーザーも驚いたそうだ。
 新たな人材の確保はもちろんのこと、いかにして人材を定着させるか、そしていかに能力を発揮させるかという“ひとづくり”の重要性が今後ますます増していくものと思われる。あるいはこの機会に働き方だけではなく、組織のあり方を見つめ直しても良いのかもしれない。コストダウンには必ず限界がある。しかし人のあり方、組織のあり方にはまだ可能性が残っている。まさに宝の山と言えなくはなかろうか。

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