「どうしたら高く売れる」の時代へ

2020年1月12日

 新年最初の号をお届けします。今年もよろしくお願いいたします。昨年後半あたりから「平成最後の」という言葉が流行したが、物事の大概は一度しか訪れない貴重なもの。日々を一期一会と思いながら取材と紙面編集に励みたい。
 終わりもあれば始まりもある。米自動車配信サービスの日本法人は、東北地方のタクシー会社3社とパートナーシップを締結。今年より仙台、福島、青森の3都市でアプリによるタクシーの配車サービスを開始する。
 同企業は、世界で問題となっている領収書を発行しない、タクシーメーターを倒さないといった悪質なタクシーの問題を回避するために、スマホのアプリやGPS機能を活用して、顧客が自分の近くにいる車両を直接探して配車サービスを受けるビジネスを確立したIT企業だ。
 タクシーと言えば、手を挙げて拾ったり、電話で迎車を依頼するのが一般的だったが、東北3都市では今年よりスマホをタップするだけで配車を行うことが可能になる。今後、自動車産業に大きな影響を及ぼすかも知れないトレンドのひとつである「ライドシェア」の考え方を提唱する同企業。同じく次世代自動車技術のキーワードといえる「自動運転」の実験開発を進めている企業のひとつでもある。
 元々、このような配車アプリサービスは日本のタクシー業界から反発を受けていたようだが、到着時刻の共有やリアルタイムでの追跡機能、同乗者との割り勘機能、過去の乗車履歴を確認できるといった機能を、タクシーに連動できる面白い試みといえる。
 思えばデジタル全盛期のこの時代にタクシーの拾い方はあまりにも古典的で不便だった。古い体質の業界と新しい企業が交えて、新しい価値を生み出す好例となることを期待したい。
 ファスナー業界はどうか。前述のようなIT技術との連携と言った面では、IoTを活用した生産管理、FEM解析による設計開発、近い将来はAIを活用した流通・在庫管理や検査技術の登場も期待されるが、まだまだこうした技術を導入する、または導入できる企業は業界のほんの一部に過ぎない。また、せっかくこうした技術を活用できるのに「製品をいかに安くできるか」のために活用してしまっていては勿体ない。
 「高品質で安いが当たり前」の時代は旧年までで終わりにして、「自分たちの製品をどうしたら高く売ることができるか」を考えていかないか。何もIT技術との連携だけが価値を生み出すわけではない。
 平成という時代を乗り越えた企業が集まる業界ならアイデアを生み出せる。

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