およそ1年前、各国は米国による相互関税措置の対応に振り回されていた。それから1年経った今では米国とイスラエルの両国が引き起こした中東戦争の対応に苦慮している。米大統領のトランプ氏は二期目の就任演説において改めて米国第一主義に触れながら自国の黄金時代を宣言したが、米国に関わる同盟国をはじめ他国の存在は本当に二の次なのだろう。国際法を無視した自国第一主義の振る舞いが世界の秩序を揺るがしており、米政権の存在そのものがリスクになっていると言えなくはないだろうか。
2月末に始まった戦争をきっかけとしてエネルギー供給網の要所であるホルムズ海峡がイランにより封鎖され、原油価格は4月上旬時点で戦争勃発前の倍近くにまで上昇している。トランプ大統領は当初軍事作戦が短期間のうちに終了する強気な見通しを示していた。発言は二転三転とした上でイラン側の態度を硬化させたまま「ホルムズ海峡に関与しない」とまで述べて一方的に作戦終了を宣言しようとしていたが、その後は一転して攻撃を通告するなど予測不能な動きを見せている。イラン側はホルムズ海峡を通過する船舶から通行料を徴収しようとしているがいずれにしても現時点で戦争前の状態に戻る見込みは少なく、エネルギーの安定供給が保証されるには相応の時間を要するだろう。エネルギー資源は文字通りあらゆる経済活動の原動力であり、今後各国の経済活動に影響を及ぼすのは必至だ。
第一次トランプ政権の誕生以来、地政学リスクが経済活動に影響を及ぼす度合いは年々強まっている。各地で紛争が勃発し、国家間の軋れきが生まれるにつれ米国を筆頭に相手国へ市場を開放するのではなく自国産業の保護に走るようになっている。特に近年は不安定化に歯止めが効かず、この10年を振り返っても米中による貿易摩擦をはじめ、ロシアによるウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇、コロナ禍を受けたサプライチェーンの再編成、そして現在の中東情勢と枚挙に暇がない。残念ながら自由貿易主義の黄金時代は去ったと見て間違いないだろう。
国際情勢と経済活動が絡み合う中で、これまでは価格競争力のある質の高い製品が受け入れられていたが判断材料はもはやそれだけに留まらない。製品の質だけでなく、持続可能であるか、安定供給ができるかといったサプライチェーンの質が問われる時代となった。欧州によるCBAM(国境炭素調整措置)の施行に伴い該当するメーカーに対しては排出量算定への対応が求められるようになったが、リスクの時代にはリスクの数だけタスクが増えることになる。国際情勢の動向には目を光らせておきたい。
