米国が日本やEUに対して相互関税率を15%とすることで合意に至った。2025年2月の発表以来続いていた駆け引きが一段落し、ようやく具体的な投資判断が可能となる環境が整いつつあるが、グローバルなサプライチェーンに構造変化をもたらす契機となる可能性がある。
トランプ氏が掲げる「米国第一の投資政策」は、国内への製造業の回帰を中核に据える。同政権下では、輸入品への関税を交渉カードとしながら、企業に米国内での設備投資と雇用創出を促す戦略が徹底されている。その象徴が今回の関税率合意であり、今後はこの新たな通商ルールを前提に、投資判断を再検討する企業が増えることが予想される。
7月23日の記者会見で、(一社)日本工作機械工業会の坂元繁友会長(芝浦機械㈱)は、「先送りされていた投資案件が具体化に向かうのではないか」と述べた。関税率が明確化されたことで、投資先の決定に迷いが生じていた企業の動きが加速するとの見立てだ。実際、設備投資の先送りはサプライチェーン再構築の足かせとなっていたが、方針が定まれば機械装置の調達も再開され、工作機械業界には大きな商機が訪れるとみられる。
とりわけ、工作機械はものづくりの根幹を支える「マザーマシン」として、製造業の設備投資には不可欠の存在だ。日本は高精度・高信頼性の工作機械において世界トップクラスの地位を誇り、特に米国は日本製工作機械への依存度が高い。再び製造拠点を米国内に戻そうとする動きが強まれば、日本からの受注は確実に増加基調となる。
同工業会によると2025年通期で受注額1兆6000億円の達成を視野に入れている。上期(1~6月)の外需は前年同期比7・7%増の5552億5000万円と、全体の71・4%を占めた。その中でも米国市場の存在感は際立ち、同国向けの受注は前年同期比13・6%増の1496億4000万円に達しており、米国の安定的な需要が外需を牽引している状況だ。
リスク要素も存在する。トランプ政権の中国に対する厳格な輸出入管理措置が、日本企業にも波及する可能性は排除できない。工作機械ではサーボモータにレアアースを使用するが現時点で業界全体として大きな影響は出ていないが、部品供給網の再編は課題となる。また、工作機械で競合する欧州各国の通商条件が今後どのように整備されるかも、日本の輸出競争力を左右する要因となる。欧州が米国と個別交渉をさらに進め、より有利な通商枠組みを獲得した場合、日本製機械の価格競争力は相対的に下がることになる。政策動向の注視とあわせ、為替変動や物流費の動向など複合的な視点で市場環境を見極めていく必要がある。