ビジネス戦略に変化の動き

2023年7月3日

 ファスナー関連の大手メーカー各社が、ビジネス戦略を転換する取組みを進めている。
 国の政策では中小企業のイノベーション促進がキーワードのひとつとなっており、DXをはじめ様々な視点から企業の先行事例や実施にむけた補助支援やヒントが今後明るみになってくる。2023年版ものづくり白書でもDXに向けた投資の拡大やイノベーションの推進が生産性向上や利益の増加、さらに所得向上につながる好循環になると指摘している。
 大手の自動車部品向けファスナーメーカーの中には、EVシフトによる自社製品点数の減少が見込まれることを前提にして方針転換する動きが見られる。
 これまでの輸送機器用のボルト生産に加えて、製品単体を販売するだけでなく締結に関する知見を活かして、測定技術や締結システムと一体化したソリューションサービスの提供に注力していくという。さらにその先には自動車産業だけでなく、新エネルギーなどの環境、航空宇宙といった新たなビジネス領域への展開を見据えて、締結技術をこれら領域に展開するための特命部署を立ち上げた。
 大手機械工具メーカーでは、自動車に組み込まれる電子制御メカニカル部品の今後の需要増を見据えて精密ボールねじや細径ギヤの加工に適した技術の開発に注力している。転造機メーカーでは、同じくこうした細径部品に注目した転造加工技術をユーザーへアピールする動きが見られる。自動車産業の変革にともなう鍛圧技術の新たな試みについては、本号で企画した「MF―TOKYO2023」特集の各社記事の中でも垣間見ることができるはずだ。
 新しい販売領域の拡大を目指す動きも見られる。工作機械・省力化機械メーカーをグループ企業に持つメーカーでは、特注機がメインだった同グループ企業にBtoC向けの汎用製品の開発を指示した。新ブランドを立上げて、これまでの需要先をグループ内や一部外販だけでなく、新しい領域へ挑む。一般消費者向け製品で量産品でもないため、売上増に即直結する取組みとは言えないが知名度の向上、開発力をテーマにした職場の活性化や若手の育成へつなげる取組みとして成長させていく。このほかにも純正パーツが手に入らない自動車や二輪車のパーツを受託製造する取組みを目指すという。
 海外と日本のものづくりがいつの間にか近接するようになり競争を余儀なくされているのが現状だ。これまで得意にしてきた「低価格で高品質の量産技術」では海外と勝負できないことは明らかである。日本は同じ土俵に立つのではなく「競争をしないためのイノベーション」が今求められているのではないか。

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