終息に向かうコロナ禍、交流加速に期待

2022年9月26日

 2年半以上続いているコロナ禍もようやく終息の兆しが見え始めている。国内では第7波が終息に向かいつつあり、また世界を見ても一部の国を除けばコロナは既に日常の一部となっている。政府は9月中旬頃に新型コロナウイルスに対する水際対策について10月をめどに緩和する方針を表明しており、円安が大幅に進んでいることから早くもインバウンド需要に期待する声が聞かれ始めている。水際対策の影響は大きく、例えば鋲螺業界にとって関わりの深い台湾についても以前は不要だったビザ(査証)が求められるなど渡航を希望する人間にとって大きな負担となっていた。同じ台湾では10月中旬に鋲螺や工具等を対象とした国際展示会(TiTE)が予定されており、鋲螺産業の国際的なトレンドを掴む場として期待したい。
 景況を見ると特に外需が旺盛な建機や、内需においても回復の兆しを見せている工作機械など一部分野では盛り返しの動きも見られるも総じてみれば回復の途上といったところであり、経済の本格的な再起動は山積みとなっている様々な課題(エネルギー資源の高騰、中国市場の停滞、極端な円安)が解決しなければ難しいように思われる。そういった苦しい状況の中でもインバウンド関連産業の復調は国内景気に良い風を吹かせるはずであり、秋口以降の規制緩和には期待したいところである。また人的交流が加速することで対話の場もまた増えるだろう。鋲螺業界では昨年より価格転嫁問題が続いているが、業界で知恵を結集してこの難局を乗り越えるためにも交流の加速を歓迎したい。
 ただ別の懸念材料として前述の課題に加えて鋲螺業界では現在ステンレス価格の下落がリスクとして注目されており、海外製品を扱っている商社に話を聞くと価格下落リスクから必要以上の在庫については慎重な姿勢を見せていた。LMEが公表しているニッケル価格を見るとウクライナ侵攻発生直後の急騰以降価格は一貫して下落を続けており、9月中旬時点では年初の水準である2万ドル/㌧に近づきつつある。近年の水準からすれば「高止まり」と見ることもできるかもしれないが今年3月に発生したLMEでの取引停止直後の水準である3万5000ドル台から見ると実に4割強の下落となっており、聞くところによれば例えば輸入品のステンレスナット(M16)の単価は材料価格急騰を受けて価格が倍以上になるも、その後は価格が下落するなど激しい値動きを見せている。長期的な視点では脱炭素のトレンドに何か修正が加わらない限り今後もニッケル市況は強気であるように思われるが、短期的には先行きが極めて不透明であるためステンレス製輸入品の取り扱いに振り回される時間が続きそうだ。

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