ファスナーとめっき業界、共存共栄の連携を

2022年5月16日

 材料のほか副資材の価格高騰がファスナー業界に大きなリスクを生み出している。めっき、熱処理、油、段ボール他が軒並み上昇していることで、材料分だけを製品価格に反映しても、これら経費が嵩み利益を大きく圧迫している。ファスナーメーカーでは、コスト上昇分を加工賃に上乗せしていく動きも見られる。
 本稿では、めっき業者について焦点を当てたい。光熱費や亜鉛、その他薬品の高騰によりめっき処理業者も大きなコスト増に直面している。
 しかし、これ以前にめっき業界の縮小は問題となっていた。関東のファスナーメーカーが多く取引している都内めっき業者の廃業は特に深刻だ。利益が出にくく、土地柄で増設や移転が難しい、亜鉛排水規制に対応するための排水設備の投資が嵩むなどの障壁が多い。2年前に廃業した都内の有力めっき業者は、多くのファスナーメーカーと取引していたほか、環境規制にも業界でいち早く取り組み設備投資にも注力していた。しかし主要需要先のファスナーで利益が出ず後継者不在によりコロナ危機直前にして廃業を決めた。
 工業統計表によると、全国のめっき業者の事業所数は、リーマンショック前の2007年が1422所だったのに対して、最新調査時点の2019年は250所と8割超が失われている驚異的な事実がある。
 今年3月には都内めっき業者が、シアンや六価クロムを含んだ汚水を下水道に直接流したとして下水道法違反で関係者が逮捕され事業停止した。報道によると、以前より都からの改善命令に従わず、排水処理の修理や資金が無かったと話しているという。一部ファスナーメーカーも取引していた業者だった。悪質な行為で庇うことはできないが、潤沢な資金さえあれば汚水を流すことはなかっただろう。
 めっき業者が危機的に失われている中で残る業者への注文が集中している。廃業により転注した案件を別業者に持っていくと倍以上の見積もりが返ってきたり、断られるケースが多いという。
 昨年12月には溶融亜鉛めっきのJIS規格(JIS H 8641)が改正された。一方、構造用アンカーボルトやターンバックル、高力六角ボルトのJIS規格には溶融亜鉛めっきの旧規格の仕様が明記されたままであり、今回の改正に準拠した何らかの対応を、改正版の移行期間である今年12月19日までにとらなければならない。こうした状況について関係者は「互いの業界で情報共有がとれていなかった。今後は連携が必要だ」と指摘する。
 ファスナー業界とめっき業界は切っても切り離せない関係だ。資材高騰が深刻となっている今こそ共存共栄のために模索する連携が必要ではないか。

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