今年も本紙は「ねじの日」特集号を発行する。
産業を支える基盤として、ねじをはじめとする締結部材は、設備や構造物の安全と機能を根底から支えている。こうした役割は平時には見えにくいが、その価値は非常時にこそ鮮明になる。改めて、この前提に立った認識が強く求められている。安定稼働が揺らぐ局面が増えるなか、「止めない」こと自体が付加価値となりつつある。
新年度に入り、各地で地震が相次いだ。長野県北部では内陸型地震が集中し、三陸沖ではマグニチュード7クラスの海溝型地震が発生。その後も宮城県沖を震源とする地震で震度5弱、奄美群島でも震度5強を観測するなど、大きな揺れが立て続けに起きた。日本列島が複合的なリスク下にある現実を改めて示している。発生場所や規模の違いにかかわらず、事業活動への影響は避けられない。
この現実は製造業にとって深刻である。工場では設備や原材料、製品が密集し、わずかな揺れでも被害が生じ得る。機械の転倒や部材の落下に加え、配管損傷による火災や漏電、停電による操業停止など、被害は連鎖的に拡大しやすい。現場の一瞬の判断や対応の遅れが被害拡大を招く局面も少なくない。その結果、復旧までの時間が長期化し、供給責任にも影響が及ぶ。
近年の大規模地震が示してきたのは、サプライチェーンの脆弱さである。一拠点の停止が部品供給の遅延を招き、生産全体の停滞へと波及する。内陸型の局地的打撃と海溝型の広域影響という特性を踏まえ、双方への備えがなければ安定供給は維持できない。供給網全体を視野に入れた対応が不可欠となっている。
こうした状況のもと、ねじ業界の役割は一段と広がっている。単なる部材供給にとどまらず、使用環境を踏まえた提案や品質保証、施工・運用に関する知見まで含めた総合力が問われる。顧客が求めるのは「部品」ではなく「止めないための機能」であり、その期待は一層高まっている。設計段階から保全に至るまで関与する姿勢が、信頼性を左右する。
事業継続計画(BCP)も各社単独の枠を超える必要がある。安定供給を担う立場として、代替生産や在庫、物流、情報共有などを含め、サプライチェーン全体での備えを構築しなければならない。平時からの連携の質が、有事の対応力を大きく左右する。
地震活動は一時的に落ち着いて見えるが、リスクが消えたわけではない。「いつ、どこで起きても不思議ではない」という前提に立つべきだ。ねじの日にあたり改めて問われるのは、ねじ業界の責務である。止めないための備えをいかに価値として示せるか。その積み重ねが産業の強靱性を支える。
