就任から100日、アメリカの行方は

2025年5月19日

 第二次トランプ政権の発足から100日が経過した。政権発足直後から政治・経済の両面で世界情勢に大きな影響を与え続けており、日本の関心事として足元では自動車及び鉄鋼・アルミ関税の行方が注目されている。関税を交渉カードに自国の利益を押し通そうとする米国はこれまでの国際協調路線と自由主義の中で培ってきた大国の地位を自ら手放しているように見える。そのような米国を脇目に中国が日本を含むアジア各国との関係強化に動いたり、その中国を避ける形でベトナムを筆頭とした周辺国やインドといった他国へとシフトする動きが見られたりと地政学的リスクに応じて静かに進んでいた地殻変動が顕在化しているように見える。昨今中国の強権的な政治体制を念頭にチャイナリスクという言葉が使われていたが、4年の任期に対してまだ就任100日であるため今後は“トランプリスク”をますます意識しなければならないだろう。
 そして2025年ももうすぐ半年を迎えようとしているが今年は年初以来低空飛行の状態が続いている。米国による相互関税措置の影響で世界的に景況感が減退しているのに加え、ねじ(鋲螺)業界の主要な需要家の一つである建設分野は依然として慢性的な人手不足やいわゆる「2024年問題」とされた働き方改革の影響を受けている。先月国内の調査会社が公表した人手不足倒産に関する調査結果では昨年(24年)は23年に続き2年連続で人手不足による倒産件数が過去最高を記録する形となり、中でも業種別では建設業が最多(100件)を占めたとしている。人手不足は日本が抱える長年の課題ではあるが先行き不透明な状況の常態化かつ低空飛行が続く中、人材確保がますます喫緊の課題となってくることが予想される。
 将来労働人口が減少した際に減少するのは人手の数だけではない。海外に市場を求めない限り国内市場の規模、モノの消費は確実に減少するがその中で事業を継続していくためにはそれまで取り扱いの無かった製品やサービスも取り扱うことで売上を確保する必要に迫られるだろう。中小企業はそれまで競合していなかった他分野の企業や規模の異なる大企業が同じ土俵に上がってくる可能性を考える必要がある。ねじ(鋲螺)についても最近大手機械部品商社がコスト競争力を売りにしたプライベートブランドの中でねじ類の取り扱い点数を増やしたり、測定・計測機器の最大手が子会社でねじを含むFA機器を取り扱うECサイトを開設したりと大企業による新規参入者の存在を感じられるようになった。この傾向は今後も続いていくことが予想されるが事業の継続のためにも市場の動向は注視していく必要がある。

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