人手不足を救うAI、生産性向上に期待も

2025年5月5日

 近年、AI技術の進展は著しく、特にテキストや画像の生成を可能にする「生成AI」は、ビジネス全般において大きな注目を集めている。製造業においても、生成AIを含むAI技術の導入が現実味を帯び始めており、生産性の向上、業務プロセスの効率化、さらには慢性的な人手不足への対応策として期待が高まっている。
 とはいえ、実際の導入はまだ初期段階である。ある業界調査によれば、生成AIを「すでに業務で活用している」と回答した企業は全体の14%にとどまり、「トライアル中」(22%)と「活用を検討中」(27%)を含めても、活用に前向きな企業は全体の63%に過ぎない。これは、生成AIに対する関心の高さとは裏腹に、実装において依然として慎重な姿勢が強いことを示している。
 導入の障壁となっているのは、初期投資や運用にかかるコスト、AI技術に精通した人材の不足、そして導入目的の不明確さなどである。AI導入が目的化してしまい、具体的な解決課題が設定されていないケースでは、期待される成果を得るのは困難である。生成AIを効果的に活用するには、「何をAIで解決したいのか」を明確にした上で、業務内容との整合性を持った活用目標の策定が不可欠である。
 AIを現場に定着させるには、技術的スキルだけでなく、実務と結びついた教育・トレーニングの仕組みづくりが求められる。現在の製造現場におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の進展度も、限定的と言わざるを得ない。経済産業省が公表した「2024年版ものづくり白書」によると、DXを通じた「個別工程の改善」に取り組む企業は約4割にとどまり、「製造機能全体の最適化」や「新たな事業機会の創出」に取り組む企業は2割程度にとどまっているのが実情だ。
 一方で、生成AIの有効性を検証しながら、先進的に導入を進める企業も出始めている。大手製造業では、全社的な取り組みによって、業務効率の飛躍的向上や製品開発プロセスの短縮、顧客対応力の強化といった成果が徐々に現れつつある。経済産業省の試算では、生成AIによる国内経済へのインパクトは25年に34兆円に達し、国内総生産(GDP)の約6%に相当すると見込む。
 今後、製造業が生成AIの恩恵を最大化するには、実効性の高いアプローチを採ることが重要だ。データの整備・活用、そして現場目線に立った運用体制の構築が、AI活用の成否を分けるポイントになる。生成AIの導入は業務の自動化だけでなく、創造的価値の創出を可能にする。製造業が持続的な競争力を確保するためには、現場と経営の両輪で、戦略的で実践的なAI導入を進めていく必要がある。

バナー広告の募集

金属産業新聞のニュースサイトではバナー広告を募集しています。自社サイトや新製品、新サービスのアクセス向上に活用してみませんか。