省庁の要請文や自主行動計画の活用を

2022年9月19日

 本紙が関東のファスナーメーカー経営者二世会に協力を得て実施した値上げに関するアンケート調査によると、鉄鋼・非鉄材料は昨年4月対比で20%近く上昇、副資材は10%~15%近く上昇していることがわかった(本紙9月12日付既報)。
 注目したいのは材料以外で原価に含まれる副資材価格の高騰だ。回答結果を振り返ると、金型・治工具は平均で9・8%の上昇、めっきは平均で14・5%の上昇、熱処理は平均で10・4%の上昇、工業油は平均で11・6%の上昇、配送運賃は平均で5・4%の上昇、電力料金は平均で11・4%の上昇していた。これまで副資材コストはメーカー側が負担している傾向があったようだが、ここまで副資材価格が高騰していると、一企業の自助努力では到底吸収できない水準に達している。
 一方で、材料価格の高騰分の価格転嫁は買い手に認められても、副資材は「なぜか認められない」窮状が伺える。仕入れコスト増にともなう下請け側の値上げ要請を認めない行為は、下請代金法と独占禁止法に抵触する可能性がある。
 値上げ要請の際に、省庁の要請文や、各ユーザー団体が公表している自主行動計画を添付する動きを強めてもよいのではないか。
 経済産業省と公正取引委員会は今年4月28日付で関係事業者団体約1700団体を通じて「原材料価格、エネルギーコスト等の上昇に係る適切な価格転嫁等に関する下請事業者等に対する配慮について」要請文を発出しており、「適切な価格転嫁等により、サプライチェーン全体でコストを負担していくことがますます重要」と示している(本紙既報)。また同省では同日付で「パートナーシップ構築宣言」の企業8000社に対しても配慮要請を発出している。要請先は買い手側の最終ユーザーに該当する可能性が極めて高く要請を反故することはできないはずだ。同文書は経済産業省ウェブサイトで公開しているので利用したい。
 また各業界団体は政府の要請を受けて「取引適正化」に向けた自主行動計画を策定しており、会員企業に実施を求めている。一例を示すと(一社)日本自動車部品工業会の計画の中には、取引価格の決定に関して「その他材料費の大幅な変動等、経済情勢に大きな変化が生じた際には、下請中小事業者の要請に応じて協議を行い、取引価格の見直しを検討する」と明記されている。各業界団体の自主行動計画は中小企業庁ウェブサイトで公開されている。
 今後はファスナー業界全体によるユーザー業界に向けた価格転嫁への要請文、または各企業が適正に値上げのエビデンスデータ等を示すことができるようなガイドラインを策定することを検討してもよいのではないだろうか。

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