いびつな経済発展 顕在化するチャイナリスク

2020年3月2日

 新型コロナウイルス感染症「COVIT―19」の影響により多くのイベントや行事が中止もしくは延期となった。ごく一例だが4月に開催予定だった台湾国際ファスニング見本市は10月14~16日に延期となったし、国内でも就活イベントなどが相次いで中止となっており、ビジネスシーンに影響が及んでいる。
 SARSの前例もあり、このような新興感染症がチャイナリスクを構成する一要素として存在感を増したのは事実だ。
 諸説紛紛としているが武漢の市場に売られていた野生動物が原因に関連しているとWHOは見ている。飼料管理、健康管理、衛生管理がなされている家畜よりも野生動物の取り扱いに注意が必要なのは当然だ。
 他国の食文化を安易に批判できないものの、適切な衛生管理や知識は必要である。中国は急速な経済発展に対し人民の意識・モラルが不釣り合いな印象が見受けられる(とは言え近年の日本でもジビエブームにより“適切に処理されなかった”野生動物由来のE型肝炎や食中毒が増えているので責めてばかりもいれないが…)。
 武漢の人口は約1100万人で、中国にはそのような都市が多くあると言うから日本からは想像しづらいほど大陸のスケール感は広大だ。ある資料によると、中国には人口500万人以上の都市が88箇所あり、300万人以上の都市が180箇所あるという。
 超1級都市:北京、上海。1級都市:広州、深セン。1・5級都市:成都、重慶、杭州、南京、瀋陽、蘇州、天津、武漢、西安。2級都市:長沙、大連、済南、寧波、青島、アモイ、鄭州―といった並びで規模感が続く。さらに、都市の発展余地はまだまだあり、今後も成長は内陸中西部へ向けて拡大していくことだろう。
 感染症や自然災害、歴史認識の相違、国際秩序への挑戦、自国優先的政策、知的財産権侵害といった中国ビジネスを取り巻くチャイナリスクは今後も断続的、反復的に発生すると思われる。米中貿易摩擦は大国同士ゆえの「非妥協的外交」の結果だった。
 このような危機が起こるたびに中国からアジア各地に生産を移管・分散させる必要性を感じるが、部品ユーザーからすれば中国の代替となり得る国・地域が少ないのが悩みどころだろう。深センは「車で1時間走るとスマホの部品が全て揃う」と言われるからだ。
 チャイナプラスワンの候補として挙がるベトナムですら裾野産業にまだまだ伸びしろがあり、部品調達の面で中国ほどのメリットは示せないのが現状だ。ファスナー企業としても今後の情勢に柔軟に対応したいところである。

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