本当に必要な支援

2018年5月14日

 アニメ・マンガ・ゲームといったサブカルチャーから、食文化・ライフスタイル・インバウンドまで幅広く、世界に日本の文化を発信しよう!「クールジャパン」が提唱され早数年…官民ファンドの「海外需要開拓支援機構=クールジャパン推進機構」が多額の税金を投じているにも関わらず、文化人・芸術家(クリエイター・アーティスト)へ殆ど予算が回らず、その上損失を発生させている。
 官民一体となっての文化事業、おそらく織田信長や豊臣秀吉と千利休をはじめとした商人達による茶の湯のような関係かもしれない。「黄金の茶室」と「待庵…侘び茶」のように、官(支援者)と民(クリエイター・アーティスト)で描いている理想像=作りたい物が一致しない事例は当時と変わらないが、今回はクリエイター・アーティストへ大した支援とならずに、「音頭取り」どころか只の「仕切り屋」となっているのではないか?一方で「表現の自由」との兼ね合いを考えると、心中(相対死)物の禁止や浮世絵絵師が手鎖にされたように、むしろ支援はなくても規制せずに活躍できる環境の保証や、海外における模倣品への対策徹底の方が重要といえる。
 これは文化・芸術活動だけでなく製造業にも通じるかもしれない。通称「ものづくり補助金」は概ね好評で、バブル崩壊やリーマンショック後の不景気により滞っていた設備更新が促進され、生産性や技術の向上が図られた。しかし長期的に健全経営をしていく為には設備投資よりも、消費税・法人税をはじめとした減税や、何よりも下請取引の適正化、才覚がある程に利益が出て頑張りがいのある構造とする事が望ましい。
 株主やスポンサー、資金提供をする側から見れば結果を求めるのは当然だが、下手に干渉せず当の本人(事業者や現場)に対し、経過・手段・裁量についてはある程度〝任せられる〟事が本当の意味での支援だろう。2020年に東京オリンピックが控えているが、育成に資金が必要な選手の為の「アスリートファースト」同様に、「事業者ファースト」の推進が必要だ。さらに云えば一般人=一消費者自身も「日本の製造業は素晴らしい」と知っていながら、途上国・新興国の安価な工業製品ばかり買ってはいないだろうか?褒めるだけで買わない冷やかしより、購入という行為を通しての資金提供も立派な評価の手段といえる。
 魚を与える事よりも釣り具(資金・設備)を与えて釣り方(技術)を教える、さらに云えば魚が育つ漁場(市場)を確保し環境を維持して密漁(模倣)されないようにする―事が重要なように、仕切るだけの支援・推進よりも資金援助、資金援助よりも長期的・確実に利益が出る構造づくりが、どのような事業に対する支援でも最終目標のはずだ。

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