2026年のねじ産業は、自動車生産の回復ペース、ロボット化・自動化投資の本格化、半導体製造装置の再拡大局面、住宅・建設・インフラ土木の需要構造の変化、さらに米国の通商政策など外部要因が複合的に作用する。ファスナーの供給体制は、環境対応と高機能化を軸に構造転換が加速する。
現在最新で発表されている2024年の国内ねじ生産(一般社団法人日本ねじ工業協会推計)は335万トンで前年比横ばいとなり、数量面では安定感を示した。一方、金額は1兆401億円で0・4%減となった。2025年は資材価格やエネルギーコスト、労務費等の価格転嫁が進み金額が増加すると見られる。
輸出では数量の低下傾向が続く。2025年(1~10月)の数量累計は23万6300トンで前年比3%の減少。金額は累計2833億9500万円で前年比1・7%の減少。ねじ輸出は米国の関税措置の影響が長期化する可能性に加え、中国向け自動車関連需要の弱含みが今後の推移の注目材料となる。
価格動向では、日本銀行の2025年11月までの国内向けボルト・ナット物価指数(2020年=100)の平均が131・5で前年比2・0%上昇。輸出ボルト・ナットは130・0で2・6%上昇。輸入ボルト・ナットは145・5で2・1%下落した。(グラフ参照)
自動車生産は2025年に底を打ち、2026年は緩やかな回復が見込まれるものの、認証不正問題の余波やEVシフトの速度変動など不確実性は残る。各社のEV・HEV比率の変化や新プラットフォーム導入により、車体軽量化、高強度、部材削減の要求は一段と強まる。ファスナーは点数の最適化や高強度小型化が不可避で、品質保証とトレーサビリティ要件も引き続き強まる。
住宅分野は人口減少と金利水準の影響から新設住宅が減少傾向を続け、ねじ需要は新築向けよりもリフォーム需要が中心となる。省エネ改修、断熱強化、耐震補強向け需要が拡大し、住宅向けねじには耐食性・高保持力・施工性向上が求められる。
建設市場では、物流施設やデータセンターの拡大が需要を支え、鉄骨・鋼構造物向けには高強度ファスナーの安定した需要が続く。インフラ土木は国土強靭化政策の継続により、橋梁補修、耐震補強、道路・港湾の更新工事が堅調で、長寿命化・防食技術の重要性が際立つ。センサー連携型の管理技術の採用も進み、ファスナーにもデジタル連携の要件が高まっている。
2026年は深刻な人手不足が続き、国内企業の自動化・ロボット化・省力化投資は構造的に増加する。協働ロボット、自動搬送、物流自動化システムなどへの導入が広がり、精密小径ねじ、軽量・高剛性の高品質ファスナーの需要が増す。
ロボット産業では、稼働信頼性とメンテナンス性が重要視され、ファスナーのゆるみ防止性能、耐振動性、材料性能も重視される。電装部品や精密機構部品の増加にともない、特殊ファスナー・機能性ファスナーの比重が上昇する。
半導体製造装置の市場は、25年に部分的な調整を経た後、26年に再拡大するシナリオが強まる。次世代ロジック半導体、パワー半導体、先端パッケージング投資の増加が見込まれ、製造装置向けには超精密で高耐食性の特殊ファスナーの需要が拡大する。
クリーンルーム対応の材料規格や、微粒子発生抑制、非磁性化などの要件が厳しくなる中、ファスナーには高純度材、高信頼性コーティング、厳格なトレーサビリティが求められる。半導体装置は日本の輸出産業の中核でもあり、ねじ産業にとっても高付加価値分野の重要な成長領域となる。
工作機械の設備投資は自動化・高効率化・環境対応需要が続き、国内の老朽設備更新が進む。北米では関税措置の不透明感が徐々に後退し、利下げ基調に入れば中小加工業の投資が再加速する見通しだ。アジアはデータセンター・エレクトロニクスが堅調で、インド・東南アジアでは自動二輪、農業機械、一般機械向けなど継続的な需要が見込まれる。機械装置の高度化にともない、工作機械産業では高強度・高耐熱・高精度ファスナーの必要性は年々高まっている。
本紙が予測する2026年以降に需要が強まるファスナー技術は環境やDXをキーワードにした下記のとおり。
▽CO2排出量を見える化した生産プロセス
▽グリーン鋼材による低炭素型ファスナー生産
▽省力化機能を持つファスナー
▽トレーサビリティ性能や、センサー連動のファスニングシステム
自動車、建設、半導体、ロボットなど多様な市場が同時に高度化する中、性能要求は分野横断的に高まりつつある。
2026年のねじ産業は、自動車の回復、インフラ更新、ロボット化の加速、半導体投資の再拡大という複数の追い風が並立する一方、通商政策や国際政治リスクも残る。数量としては緩やかな回復が見込まれるが、産業全体が高付加価値型へと構造転換する力学はより強まる。環境対応とデジタル化、精密化を軸に、どれだけ高機能品へシフトが進むか26年の最大の焦点となる。
