(一社)日本自動車工業会(自工会)と(一社)日本自動車部品工業会(部工会)は、車載半導体の安定調達に向け両会が連携して取り組む方針を発表した。過去の東日本大震災や火災事故、さらにコロナ禍における半導体供給課題への対応を踏まえ、自動車メーカーと自動車部品・半導体メーカー間での情報共有と協力体制の強化を狙いとする。両会は「車載半導体の新陳代謝促進による供給安定性向上を目的としたガイドライン」を策定し、サプライチェーン全体での取り組みを推進する。
半導体は自動車の電子制御システムや安全装置、インフォテインメント機器など、現代の車両に不可欠な部品である。しかし、過去の震災や火災事故、さらに世界的な感染症拡大により、供給網が寸断される事態が発生してきた。自動車メーカー各社では、旧世代の半導体の供給不足により生産に影響が出た事例もあり、予期せぬ生産終了(EOL)による部品供給問題が業界全体で懸念されている。このため、ガイドラインでは半導体の新陳代謝促進を柱とし、旧世代半導体の継続採用を可能な限り避け、供給継続性の高い半導体の採用を各社に求める方針とした。
ガイドラインの内容は大きく二つに分かれる。第一は、自動車メーカーから部品メーカーへ伝える情報の整理である。新規製品に電子電装部品を搭載する場合、量産開始時期や仕様変更情報を部品メーカーに伝えることが従来から行われてきたが、情報の精度や共有範囲には課題があった。特に、一度開発した電子電装部品を他製品に流用(キャリー)する場合、部品・半導体メーカーへ十分に情報が伝わらず、生産終了による供給リスクが生じることが確認されている。このため、メーカー間の情報伝達の標準化を図り、EOLに起因する供給問題の回避を目指す。
第二は、自動車部品メーカーの行動宣言である。部品メーカーは平常時から電子電装部品の供給性を確認・管理し、新規開発時には供給継続性の高い部品を選定する。また、流用や生産延長が発生した場合は自動車メーカーへ速やかに通知し、供給継続に懸念が生じる場合は密接なコミュニケーションを通じ、経済合理性や製造上の制約も考慮した対応策を協議することとした。これにより、サプライチェーン全体で安定供給を確保する体制を整える。
今後、自動車メーカー各社は業務システムや管理体制の見直しを進めるとともに、半導体の安定調達に必要なデータを一括管理するプラットフォームの構築を検討する。有事における生産継続計画(BCP)の迅速対応も視野に入れ、震災や事故、国際的な供給制約などに備える。また、半導体のEOLや供給停止に備えた情報共有と在庫管理の精度向上も図られる見込みだ。
自工会・部工会の取り組みは、単なる情報共有の枠に留まらず、半導体の安定調達を通じて自動車産業全体のものづくりを支える狙いがある。車載半導体は電動化、自動運転、コネクテッドカーといった次世代車両開発の鍵を握る部品であり、安定供給の確保は国内外の自動車メーカーにとって喫緊の課題となっている。両会は今後も、自動車・自動車部品・半導体メーカー間の連携を深化させ、持続可能な供給体制の構築に向けた取り組みを推進する方針だ。
