弊社創業80周年を記念して本号は「キンサンEXPO2026~新技術・新サービス展~」を特集する。本企画は今期より毎年定期的に実施する予定だ。
創業以来、本紙はファスナー業界とともに歩みを重ねてきた。直近の10年を振り返れば、ものづくりの現場を取り巻く環境は激変を遂げている。国際的な価格競争の激化による従来のコスト競争からの脱却、深刻化する人手不足と後継者難、多品種少量生産における省力化という難しい生産体制、さらにはサプライチェーンにおける物流機能の価値向上や、脱炭素対応やグローバルな品質管理要求など、業界が直面する課題は複雑化の一途をたどってきた。こうした課題を乗り越え、持続可能な発展を遂げるための鍵のひとつとして、本特集の中でも垣間見えたのが製品単体の供給にとどまらない「モノ」から「コト」へのビジネスモデル転換である。
今回EXPO(展示会)と銘打った特集は、まさにこうした時代背景と業界の構造変化を踏まえ、自社が持つ先端技術や新規サービスを広範な層へ広く発信するプラットフォームとして企画した。この10年で本紙は本号のサブタイトルにある「つながる新聞」を目指して、業界内だけでなくユーザー層や海外のファスナー業界にまで情報が届く媒体づくりを進めて仕組みを整備してきた。この紙面を業界共通インフラとして位置付けて、企業と人、技術と課題を結びつけ、業界全体の活性化を力強く後押しすることを目的としている。
今号の特集や紙面を通じて読者にお伝えしたいのは、これからのファスナー技術およびサービスが向かうべき新たな潮流であり、単なる製品の性能向上にとどまらない多角的な価値創出への移行である。
本特集の具体例としては、AIなど先進のデジタルツールの活用による顧客課題の抽出とエンジニアリング支援の高度化、製品に付随するデータ管理や環境負荷可視化によるサステナビリティ対応、製造機械メーカーのノウハウを活かしたライセンス事業モデル、さらには自動化・ロボット化に最適化した締結プロセスのシステム提案や、中立的な立場からの締結技術のコンサルティング・試験評価といった専門的知見の提供などが挙げられる。
これらの取り組みに共通するのは、ファスナーを単なる締結部品として捉えるのではなく、データ、環境適合性、エンジニアリングサービス、プロセス改革といった総合的な価値を付加して市場に提供する姿勢である。次なる時代に向け、新たな技術潮流とビジネスのあり方を提示する各社の挑戦が、日本産業の現場を支える強力な基盤となることを期待したい。