日本の製造業を支える「母なる機械(マザーマシン)」の需要が力強い拡大を見せている。(一社)日本工作機械工業会が発表した7月の受注確報によると、受注総額は前年比50・4%増の1930億9000万円となり歴代3位の記録を達成した。日工会の坂元繁友会長が「受注は回復局面から拡大局面に入った」との見解を示した通り、設備需要の勢いが鮮明となっている。この好調を牽引しているのが、世界的なデータセンターや半導体製造装置に関連する需要の急増である。特に外需は前年比50・5%増の1398億5300万円と大きく伸び、北米や欧州、韓国、台湾、インドなど幅広い地域で積極的な設備投資の姿勢が窺える。
同様の需要動向は鍛圧機械にも波及している。(一社)日本鍛圧機械工業会がまとめた7月の受注総額は前年同月比60・5%増の370億9000万円と大幅な伸長を見せた。特に輸出が前年比2・1倍へと急拡大しており、北米向けが3・6倍、中国向けが2・1倍となるなど全体を押し上げた。工作機械と共通する電気・精密や一般機械、自動車の構造変化といったカテゴリの需要拡大が、機械産業全体にとって強力な追い風となっていることは確かだ。
内需に目を向けても、補助金採択効果や人手不足に対応する自動化・省人化、老朽機の更新需要に支えられ、両業界ともに着実な増加傾向を示している。しかし、世界的な需要急増に伴う部材・部品の入荷遅延や納期への影響、インフレによる設備コストの上昇など、供給面での課題は依然として根強く残されている。
さらに、今後の重大な懸念材料として浮上しているのが、主要市場の一つである中国の貿易規制の動きだ。日本貿易振興機構(ジェトロ)が発信した6月11日のビジネス短信「中国、旋盤など材料加工生産設備やドローンの輸出申告を厳格化」によると、中国政府は旋盤をはじめとする材料加工生産設備について、輸出申告や管理手続きの厳格化を打ち出している。中国は日本の工作機械にとって最大の輸出市場の一つである。
仮にこうした材料加工設備の輸出管理規制や手続きの厳格化が長期化・拡大すれば、日本からの製品出荷・通関遅延や現地顧客の投資手控えを招き、国内生産・輸出を主軸とする日本の工作機械産業にとって大きな懸念材料となるリスクを孕んでいる。
旺盛な需要に沸く現在の拡大局面は、事業基盤を強靭化するための絶好の機会である。一方で堅調な市場への供給対応だけでなく、特定地域への過度な依存を避けるリスク分散や安定した調達体制を確保し、地政学リスクに対応できる堅牢な事業戦略を築く姿勢が求められている。