人手不足や後継者難、熟練技能の継承など、製造業が抱える課題は、以前から繰り返し指摘されてきた。優れた技術や製品を持ちながら、その価値や仕事の魅力を地域社会に十分伝えられていない企業も少なくない。こうした課題を背景に、全国で「オープンファクトリー」の取り組みが広がってきた。企業が工場や生産現場を公開し、製品が生まれる過程を知ってもらう活動である。
地域でこうした取り組みが行われているのを目にする中で、改めて感じるのは、ものづくりの魅力は「製品」だけにあるのではないということだ。どのような設備を使い、どのような工夫を重ね、どのような人が製品を生み出しているのか。その過程そのものに、企業の技術や仕事の面白さが詰まっている。
工場は本来、部外者が自由に出入りできる場所ではない。その工場をあえて地域に開くことは、企業にとって決して小さな決断ではない。それでも「自分たちの仕事を知ってほしい」という思いから現場を開く企業が増えている。オープンファクトリーは、閉じた生産現場と地域社会との間に、新たな接点をつくってきた。
そして、その動きは「ファクトリー」から「カンパニー」へと広がりつつある。オープンファクトリーが製造現場を中心に企業の技術や仕事を見せる取り組みだとすれば、「オープンカンパニー」は、その考え方を工場だけでなく、会社全体へと広げていく発想といえる。
工場を持たない企業も含め、物流、建設、商業、介護、サービスなど幅広い業種が地域に開かれる。これは単なる名称の変更ではない。オープンファクトリーで培われてきた「現場を見せる」という発想を、企業活動全体へと広げる動きと捉えることができる。
製造業においても、地域に知ってもらいたいのは工場だけではない。設計、営業、品質管理、物流、人材育成など、製品を支えるさまざまな仕事がある。工場の機械を見てもらうだけでなく、そこで働く人や仕事の仕組み、企業が地域で果たしている役割まで伝えてこそ、会社の姿が立体的に見えてくる。
重要なのは、イベントを一過性の催しで終わらせないことだ。企業を開く取り組みを、採用、社員教育、販路開拓、企業間交流、地域との関係づくりへどうつなげるか。企業自身が、その可能性を考える必要がある。自治体や産業支援機関にも、企業が継続して地域とつながるための環境づくりが求められる。
オープンファクトリーで始まった「見せる」取り組みを、「知る」「つながる」機会へと発展させる。オープンカンパニーの広がりが、企業と地域の新たな交流を生み出すことが期待される。