中国のタングステン輸出規制が深刻に

2026年2月9日

 中国によるタングステン輸出規制が、製造業全体へ静かな影を落としている。超硬合金の主要原料であるタングステンは、切削工具だけでなく、ねじ製造に用いられる鍛造金型をはじめ塑性加工分野でも用いられている。材料供給の不確実性は、日本の製造業の競争力に直結する問題となっている。
 昨年2月付の中国公告10号により、APT、酸化タングステン、炭化タングステンなどの関連品目は輸出管理対象とされ、その後も解除されていない。超硬材料メーカー大手が公式発表しているように、レアアース関連規制の一部施行停止と混同されやすいが、タングステンを巡る調達環境は依然として逼迫したままだ。原料価格の高止まりは、超硬工具や金型のコスト構造を圧迫し続けている。
 さらに今年1月、中国商務部は「両用品目の日本に対する輸出管理を強化する措置」を公布・施行した。軍事ユーザー、軍事用途、あるいは日本の軍事力向上に寄与すると判断される最終用途に該当する場合、日本向け輸出を禁止すると明記した点が特徴だ。許可申請による例外を想定しない「禁止措置」であり、用途判断は中国当局に委ねられる。民生用途を前提とした取引であっても、最終用途の解釈次第では規制対象となり得る構造は、企業にとって極めて不透明だ。
 超硬合金は鍛造金型の寿命延長や加工精度向上を支えてきた。広範な分野で使われるだけに、材料供給が制約されれば、製品供給や設備投資に連鎖的な影響が及ぶ。今回の規制は、単なる原料不足の問題を超え、取引継続そのもののリスクを内包している。
 海外では、この動きを戦略転換の契機と捉える動きもある。米国のタングステン資源企業は、中国の輸出規制強化を受け、北米域内でのタングステン供給体制の重要性が高まっていると強調する。戦略資源を自国・自地域で確保しようとする潮流は、今後さらに強まる可能性が高い。
 日本の超硬材料・金型メーカーにとって、調達先の分散化はもはや努力目標ではなく、生存条件に近づいている。超硬材料メーカーが進める複数国調達やリサイクルによる再資源化は、その現実的な対応例だ。ただし、代替調達にはコスト、品質、供給量の制約が伴い、短期的な解決策にはなりにくい。タングステン代替材料の研究も進むが、超硬工具が持つ総合性能を完全に代替するには時間を要する。
 今回の一連の規制は、特定国依存のサプライチェーンが地政学リスクにいかに脆弱かを改めて突き付けた。原料が「買える前提」で成り立ってきたものづくりの構造は、転換点に立たされている。企業は業界全体として資源循環、調達多元化、材料技術の高度化を中長期で進める必要がある。

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