BCPに休みはない

2025年12月22日

 2024年の元日に発生した発生した能登半島地震―。災害は正月だろうと構わず突如として襲ってくるもので、BCP(事業継続計画)は24時間、年中無休である。しかし事前に準備を整えておくことで、混乱や心理的負担を最小限に抑えられる。
 災害対応では、最小限の復旧要員で最大限の効果を上げることが原則である。全員が出勤すれば安心、というわけではない。従業員には休むべき時に休んでもらうのが原則であり、その匙加減を判断するのは経営者や管理者の役割だ。休日返上で対応した従業員には、適切な埋め合わせや報酬を与え、信賞必罰を示すことも不可欠である。
 一方で、すべての従業員がこうした緊急時に呼べるわけではない。帰省や遠方旅行中で、そもそも現場に駆けつけられない場合もある。その際は、優先度の高い人員から順次呼び出し、必要最小限で初動対応を確保する。また、大規模な事業所や工場では、警備員や常駐要員の確保が不可欠であり、初動対応や被害状況の把握、報告が滞ると対策も進められない。
 復旧体制の組み立てでは、短期間で多人数が必要な作業と、長期間で少人数が必要な作業とでは、人員配置の戦略が大きく異なる。呼び出しはあくまでも各人員の意思と能力、復旧に必要なノウハウを総合的に勘案して決定すべきだ。
 さらに、従業員の安全確認も重要な要素である。所在の確認は必要最小限に留め、休暇をどこで過ごしているかを無理に尋ねることは避けつつ、緊急時の〝つながらない権利〟との線引きを事前に合意しておくことで、心理的負担を大幅に軽減できる。また、休暇中の全従業員に対して、定期的に状況を共有する仕組みを設けつつ、返信不要・ミュート可能な形でも安心感を与えられる。呼び出しや作業分配は、あくまでも「今動ける、やる気がある、復旧に必要なノウハウを持つ」従業員を優先して判断することが、最小限体制で最大限の効果を上げるために不可欠である。
 そして忘れてはならないのは、経営者も人間であるということだ。会社のトップ自身が被災したり、連絡がつかない状況もあり得る。そのため、ナンバーツーやスリーといった代行者を事前に立てておくことが重要である。経営者自身の安全確保もBCPの一部であり、責任と権限を分散した体制こそ、組織の持続力を支える。
 BCPに休みはない。しかし、事前に準備を整え、最小限の体制を戦略的に組み、従業員の権利や安全を尊重することで、混乱や心理的負担は大きく軽減できる。自然は待ってくれないが、備えによって組織はしっかりと立ち向かえるのである。

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