高市内閣が先月末に発足し、初の首脳外交で鮮烈な印象を残した。トランプ米大統領との会談では信頼関係の構築を内外に示し、中国の習近平国家主席をはじめ各国首脳との対話でも安定感を見せた。外交デビューは順調に映るが、通商秩序は急速に変化している。新政権には、現実的かつ戦略的な舵取りが求められる。
日本貿易振興機構(ジェトロ)が10月30日に発表した「米国の貿易投資年報」によると、2024年の米国実質GDP成長率は前年を下回ったが高成長を維持。財の輸出入はいずれも増加し、貿易赤字は拡大した。対内直接投資は減少したが、対外投資は増加。対日貿易では輸出入ともに増加し、赤字は縮小した。日本は依然として最大の直接投資国であり、日米経済の結び付きは強い。
トランプ政権は「米国第一の通商政策」を掲げ、関税を軸に通商再編を進めている。4月には全世界からの輸入に一律10%のベースライン関税を導入し、続いて57カ国・地域に上乗せ関税を発動した。日本は交渉の結果15%に軽減されたが、同盟国であっても例外ではない。通商政策の優先が同盟より国内産業保護に置かれていることを示す。
米国は鉄鋼・アルミ、自動車・部品など戦略物資への追加関税を拡大。鉄鋼とアルミは最大50%、自動車・部品には25%の関税を課している。さらに半導体や医薬品、重要鉱物、航空機など先端分野も調査対象とし、追加関税を辞さない構えを見せる。ジェトロ報告では米国の輸出増を支えた医薬品や一般機械が日本の得意分野と重なり、協調と摩擦の両面を孕む。トランプ政権の狙いは貿易赤字の是正ではなく、経済安全保障を梃子に産業主権の回復を図る点にある。関税を安全保障・技術覇権・雇用回復と結びつけ、内政基盤の強化に直結させている。日本にとってもこの流れは無関係ではなく、通商を通じた経済連携の在り方が問われている。
高市政権の課題は明確だ。第一に、同盟関係を維持しつつ摩擦を防ぐ予防外交を展開すること。第二に、供給網再編に対応し、日米の産業補完関係を再構築すること。第三に、米中対立の長期化を踏まえ、多極的な経済連携を推進することだ。
トランプ政権下の米国市場は依然として巨大だが、通商環境は不確実性を増している。数字の増減に一喜一憂せず、政策変化を先読みした外交的機動力が不可欠だ。高市政権は通商・投資・安全保障を一体で扱う「経済外交」を通じ、アジア太平洋の安定を支える立場を確立すべきである。トランプ大統領との信頼を足掛かりに、関税問題やサプライチェーン再編で日本の立場をいかに守るか。そこに高市外交の真価が問われる。
