ものづくりで「不可欠な地位」築け

2025年7月14日

 経済産業省が6月に発表した「通商戦略2025」で柱のひとつとして掲げられた「自律性・不可欠性の確保」は、今後の日本のものづくりにとって中核的な概念といえる。
 近年、資源や半導体をめぐる地政学リスクの高まり、さらには人権・環境といった新たな規制への対応など、製造業を取り巻く環境は一段と複雑さを増している。そうした中、単に安価で高品質な製品を供給するだけでは、国際競争で勝ち残ることは難しい。国際サプライチェーンにおいて「この国の製品なしでは成り立たない」と思わせる不可欠な地位を築くこと、それこそが製造業に課せられた新たな成長戦略である。
 戦略ではそのための具体策として、同志国と連携した重要技術開発や、グローバルサウスとの新たな供給網構築、さらには資源・エネルギーの調達先多角化などが列挙されている。いずれも、製造業における中長期的視点での事業構築が求められる課題であり、その成否が企業の生存を左右する。
 加えて、国際市場における「非価格競争力」の重要性も高まっている。安定供給能力、環境性能、サステナビリティ対応、人権配慮など、いわば〝見えにくい価値〟をいかに可視化し、競争優位につなげるか。日本の製造業が従来得意としてきた、緻密な工程管理や品質保証の姿勢は、この非価格競争の時代において強力な武器となる。政府によるガイドライン整備や海外展開支援も進められているが、それを活かすのは企業自身の現場力と戦略的判断である。
 とりわけ中堅・中小の製造業者にとっては、サプライチェーンの末端に位置する立場から、国際的な要請にどう対応するかが喫緊の課題となる。EUの規制をにらんだ情報開示要請などはすでに現実のものとなりつつある。こうした要請を「コスト」としてではなく、「不可欠性の土台」と捉える視点こそが今求められている。他方で、不可欠性を構築するには自律性が不可欠だ。たとえば、特定国に依存する原材料や部品の供給体制では、国際的緊張の中で脆弱性を抱えざるを得ない。調達先の分散、代替技術の開発、国内供給網の維持など、地味だが不可欠な投資が企業に求められている。
 不可欠性は自然と得られるものではない。積み重ねられた現場の技術、信頼、対応力によってはじめて「なくてはならない存在」となる。世界に選ばれる製造業とは、単なるコスト競争から抜け出し、不可欠な技術力と供給力で相手国に貢献する存在でなければならない。製造業こそが、日本経済の根幹を支えるエンジンである。不可欠性という新たな価値基準のもとで、いかに次の飛躍の布石を打つか。技術と信頼を武器に世界を支える新たな製造国家像が、今まさに問われている。

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