【樹脂向け・樹脂ファスナー技術特集】専用ねじ各社で開発、金属との複合製品にも期待

2021年11月8日

 本号では樹脂向け・樹脂ファスナー技術を特集する。ファスナーの締結部材の多様化とともに樹脂素材も多岐にわたっている。樹脂専用ファスナーや金属との複合製品、樹脂そのものを材料にしたファスナーなど最新動向を探った(4面から7面に特集記事、次号に続く)。
 計量化を目的に外装や部品フレームの樹脂化が進むのは四輪・二輪分野だ。樹脂部品同士に金属ファスナーの締結特性をもたせるために、樹脂部材に埋め込むインサートナットやインサートコイルが採用されている。締結時の供回りを防ぐための特殊形状、生産ラインでの圧入・挿入作業の効率化を図れる製品など特長ある製品を各社がリリースしている。
 樹脂専用タッピンねじは、ナットレス化による軽量化やコストダウンを図れる代表的な製品だ。これまでは主に弱電機器に使用されてきたが、電子制御化が進む自動車の樹脂部品にも多く採用されてきている。下穴径、樹脂素材、トルク、熱、回転数など様々な設計条件によって締結品質が左右される製品だけに、各社で最適な設計を支援するためユーザーへの締結データ提供などが重要な鍵となっている。樹脂・金属向け問わず、タッピンねじによるナットレス設計はかねてより海外自動車メーカーが多く採用しており、自動車メーカーのグローバル提携やEVシフトによるユニットの共通化などが進めば、電子基盤の締結のほか、強度の求められる箇所でもタッピンねじの採用が増えるのではないか。
 金属と樹脂の複合技術も進んでいる。金属ファスナーに一部樹脂を射出成形で複合化した製品も登場している。金属ファスナーの締結機能に、耐食性や耐薬品性、耐傷性など樹脂の特性を付加した製品は、産業分野を問わず採用されている。ファスナーメーカーの一部では樹脂成形に注目した設備投資をする動きも見られ、複合技術やアッセンブリ能力の進展が期待できる。
 樹脂ファスナーも多彩だ。樹脂特性をそのままファスナーに活かせる製品は、軽量化や半導体関連、ドローンなど先端分野での採用拡大が期待される。CFRP製のボルト・ナットも登場している。金属ファスナーと違い成形方法もまったく違う技術となるので、樹脂素材を専門にしてファスナーほか加工品全般を取り扱う企業があるが、前述の通り金属専門のファスナー・プレスメーカーでも、樹脂の切削加工やワッシャー生産に取り組む動きがある。ねじ商社でも、取扱いを強化する動きも見られ、今後も市場の拡大が注目される。