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各国は本来あるべき外交の姿を

米中貿易摩擦が追加関税の応酬に発展している。米中は事態の収拾の見えない関税報復合戦をただちにやめて、正常な対話の席に座り本来の国家間の外交的議論をするべきだ。

これまでの応酬で米国側が第一弾で産業機械などに25%、第2弾で半導体などに25%、第3弾で家電などに25%の関税をかけてきた。これに対して中国は第1弾で大豆などに25%、第2弾で古紙などに25%、第3弾でLNGなどに10〜25%の引き上げを行ってきた。これに留まらず第4弾の追加関税として今年9月から12月に米国側は衣料・スマホなどに10%、中国側は農産物や原油に5〜10%の関税を順次上乗せするとしている。

関税品目はほぼすべての輸入品にまで対象が広がっており、残る品目は米国側が中国以外で調達が難しい希土類(レアアース)や命に関わる子供用安全シート、医薬にまで絞られており、中国側の対象品目も残るは自国産業に影響しかねない大型飛行機や半導体などに限られている。このため両国とも今後も制裁を続けていくとするならば、既に制裁対象となっている品目の関税率を引き上げていくしかない。

制裁カードがなくなりつつあり追い込まれる中国は、米国が主張し批判してきた元安誘導を加速させる可能性もあり、関税引き上げの応酬の先には通貨安競争に発展する可能性が高まり、世界経済の不安定要因をさらに増やすことになる。

本紙夏季アンケート調査で米中貿易摩擦について自社にどのように影響すると思うか聞いたところ、7割のねじ関連企業が「マイナスに影響する」と回答しており(本号1面に関連記事)、その理由の中にはすでに中国向けの案件に影響が出ているとの回答が多数あった。世界の経済トップ2の両国間の貿易に大きな壁が作られ始めている中、あらゆるモノに使われている日本のねじの産業にも影響が出始めている形だ。

大国間の貿易戦争に端を発した鉱物資源の価格動向も懸念される。中国はレアアースのほか、タングステン、モリブデン、インジウムで1位、マンガンで2位、チタンで3位の生産国。アメリカはモリブデンで3位の生産国だ。資源ナショナリズムの高まりによる経済の影響を例に挙げると、ニッケル生産1位のインドネシアは自国精錬所の保護を目的に、2022年に予定していたニッケル輸出規制を今年に前倒しする可能性が高まったことから、足元のニッケル相場が急伸している。

日韓の輸出規制問題も通商問題から安全保障問題にまで飛躍している。制裁と報復ありきの交渉ではなく、自国の真の利益を今一度冷静に顧みて、互いの利益と面子をぎりぎり確保できる本来あるべき交渉を各国の外交に求めたい。

2019/09/02 金属産業新聞