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発想の転換で真の豊かさを

世間では便利な都会生活を捨てて田舎暮らし求める風潮が一部の世代あるいは家庭で広まっていると聞く。テレビ番組や過疎の自治体などが田舎暮らしを支援するプロジェクトをPRするなどかつてないほどである。なんで最近になってこのような田舎暮らしを推進する風潮が高まっているのかを考えてみたい。昨年七月に角川書店が出版、藻谷浩介著・NHK広島取材班制作「里山資本主義」=日本経済は安心の原理で動く=の影響も少なくないようだ。今年の八月ですでに第八版が印刷されているので読者の中にも手に取られ購入された方も多いかと思われる。内容について詳しく紹介する訳にはいかないが、昔ながらの田舎暮らしをしなさいというものではなく、某国のような幸せを押しつけるようなものでもないことを同書では強調している。

生活の中身はそれほど変わらないものの、本質的には革命的に転換されるということである。現在の企業人の大多数は、もっと稼がなくては、もっと高い評価を得なくてはといった、いわゆる経済の常識に翻弄されているといっては過言であろうか。家に帰って寝るだけ、ご飯を炊く暇もない、下着はコンビニで新品を買っているという生活。なのにそれほど豊かな生活を送っていないということである。給料は高いかもしれないが、物を買う支出がボディブローとなって、金が残らない。だからますます頑張る。日本経済にとってはありがたい存在である。エネルギーや資源をちまちま節約するな、それを上回る収益を上げればいい、規模を拡大すれば利益は増えていく、これが豊かさなのだ、というのが百年前にアメリカで始まった資本主義の常識といってもよい。アメリカで始まったこの常識は日本などの先進国に浸透、その後、発展途上国にも広がっていった。ところがグローバル経済体制が確立して、世界中が同じ常識で、同じ豊かさを追い求めるようになった結果、先進国が息切れを起こし始めた。これが今の経済状態ではないかと、同書は結論付けている。次いでこうした常識は発想の転換で解決できると指摘する。2008年の米国の一証券会社リーマンブラザースの破綻を引き金に発生した、いわゆるリーマンショックである。一証券会社の破綻がなぜ世界中を経済危機に陥れたのであろうか。なぜアメリカの金融街、ウォール街の失敗が世界の実体経済の根幹をなすべき自動車産業に飛び火して、炎上させたのか。これを説明するにはアメリカ型資本主義の失速とそれを延命させるために血道を上げた、経済牽引者の帰結であった。

この際、発想の転換を図りながら経済事情を分析する時期に来たと考えたらどうか。アメリカが世界に発信した豊かさの形とは、自動車のGM、電気のGE、化学のデュポンなどの超優良会社によって作られた。しかし、快進撃はいつまで続く訳はない。日本車の追い上げでアメリカのビッグスリーは凋落しアメリカ経済はおかしくなった。お金がお金を生み出す経済の歪みがリーマンショック後のアメリカではないだろうか。

2014/09/11 金属産業新聞