スタートアップ、ベンチャー、次の一手の意義

2023年3月13日

 仕事柄、展示会会場HP内のイベントスケジュールをよく閲覧するが、最近気になったのは「KOKOKARA Fair 新産業を始めよう―モノづくり・コトづくり※2月1~3日、東京ビッグサイト(江東区)」だ。
 開催概要を見ると次のように書かれている。
 2022年3月に経団連が発表した「スタートアップ躍進ビジョン」では、27年までにスタートアップの裾野、起業の数を10倍にするとともに、最も成功するスタートアップのレベルも10倍に高める事が目標。新しい視点やアイデアで開拓する企業、大学、サポートする自治体・団体・投資家が連携し、オープンイノベーションを目指す―※要約。
 一昔前によく云われていた「ベンチャー企業」、そして最近云われるようになった「スタートアップ企業」。明確な区別は難しいが、設立して間もない〝若い〟〝駆け出し〟の企業は共通で、「スタートアップ企業」は「ベンチャー企業」以上に新規性の強いビジネスモデルでスピード感を持ち、事業が軌道に乗ったら中長期的な継続よりもM&Aや売却を見据えている傾向が強い。
 時代が変化すると新規の需要が生まれ供給=産業が興る、一方で既存の需要は低下し、衰退する。そして大資本が鳴り物入りで会社を設立しない限り、大概の企業は創業時にベンチャー・スタートアップ企業だ。
 本紙関連業界でも江戸時代の鍛冶屋からの企業は明治以降の近代化で、戦後直後創業の企業は復興・工業化で、変化するタイミングを読み取り〝需要がある〟と見込んで創業した当時としてはベンチャー・スタートアップ企業であり、今では老舗・有力企業となった例も多い。その過程でメーカーから商社に、商社からメーカーに、ねじ・ばねに限らず幅広く金属加工に―等で方針の拡大・切り替えも図った事もあるはずだ。そして昨日今日で日本のどこかで創業している企業もあるかもしれない。
 業界は現時点で成熟産業だが、或る企業の社長は「上手くいっていても今まで通りを続けたらジリ貧、事業形態を大きく変えなくても、何かいつもと違う事・新しい事に挑戦しなくなると、時代に取り残されてしまう」と言っていた。経済活動は「挑戦しないと成長できない」というよりは「維持するだけでは衰退する」と考えるべきだろう。
 創業直後のベンチャー・スタートアップ企業の時期は遥か昔となってしまっても、企業には余力があれば事業における〝次の一手〟を模索、そして〝第二・第三創業期〟には何らかの仕切り直しが必要だ。そして同時に社会には「挑戦を勧める」だけでなく「失敗を許容できる」「立ち直れる」風潮も必要なはずだ。

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