EUが適用するCBAM、ねじも対象に

2023年2月6日

 欧州連合(EU)は昨年12月に国境炭素調整措置(CBAM:Carbon Border Adjustment Mechanism)の設置導入することで合意した。
 CBAMは対象製品をEU域外から輸入する際にEU排出量取引制度(EU ETS)に基づいて課される炭素価格に対応した価格の支払いを義務付けるもので、EU域内の企業が環境規制の緩いEU域外へ製造拠点を移転するなどのカーボンリーゲージを防ぐことが目的となっている。最終合意に至った後に2023年10月1日から移行期間が開始され2026年には炭素賦課金の支払い義務化が始まる予定だ。
 適用する製品の中にはカーボンリーゲージのリスクが高いセメント、鉄・鉄鋼、アルミニウム、肥料、電力のほかにも水素や鉄鋼石、フェロマンガン、フェロクロム、フェロニッケルの一部が加えられているほか、新たに鉄鋼製のねじやボルトも加えられた。
 CBAMが適用された場合、欧州へ輸出するねじ・ボルトに対して炭素賦課金が課せられ、輸出する企業は従来取引よりも不利な立場となる。また欧州をメインの輸出先にしていない企業でも、CBAMを避けるために第三国が輸出先を欧州から米国、アジアへとシフトさせることでマーケットシェアを奪われる可能性も否定できない。
 ファスナー業界では今後の進捗に注目している企業も多いはずだ。この問題にいちはやく警鐘を鳴らしたのは(一社)日本ねじ工業協会の佐藤義則会長だ。1月19日に開催された(一社)日本ねじ研究協会と合同の新年賀詞交歓会でこの問題を話題に挙げて、経済産業省との連携のもと長い時間をかけて調査を行ったほか、影響に関する会員アンケートを取りまとめたことを明かしている。今後、調査結果に関する分析を進める段階に入るとしている。同席していた経済産業省には、なるべく課金を抑えられるように交渉して欲しいと要望した。
 遡ればRoHSなどの環境規制、そして近年のカーボンニュートラルやEVシフト戦略、GX(グリーントランスフォーメーション)や今回のCBAMを含めて、とかく欧州などにイニシアティブをとられて後手にまわる日本の構図は相も変わらずだ。EUのこれら動きが本来の環境保護だけでなく自国(自地域)産業の保護を目的にしていることは、かねてより指摘されており新たな貿易摩擦を引き起こさないか懸念される。一方、日本が環境技術大国を謳うのであれば、技術革新による技術の高度化でこれらに対応していくことは勿論ではあるが、ものづくりだけでなく、枠組みづくりを主導できる政治的強さも備えていく必要がある。

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