長期的視点があるのか?外国人労働力頼み

2021年12月20日

 〝我々は労働力を呼んだ。だが、やってきたのは人間だった〟。これはスイスのマックス・フリッシュ(小説家・劇作家・建築家)が約50年前に語った言葉と言われているが、今や欧州は移民政策の負の側面が表出している。
 そして日本―。11月に岸田文雄首相が「外国人就労拡大」として「在留資格特定技能」における長期在留や家族の帯同が可能な「2号」の対象分野を農業・製造業・サービス業等にも拡大する見解を示し、これは事実上の「移民受け入れ解禁」ともとられている。
 エリートといわれるような「高度な技能(知識を含む)」と自国で困窮して新天地を求めてのような「安価な労働力」。「一時的な滞在」と「長期滞在」―。それぞれ2種類の計4種類では意味合いで大きな隔たりがあるはずだ。
 もちろん人類は移動・交流を行い続けてきた。そして日本が今まで外国人に頼らずにきたわけではない。
 今でいえば発展途上国や新興国といえそうな古代の日本に渡来人や鑑真和上が来日したのをはじめ、遣隋使・遣唐使を派遣し、移動が大変だった時代でも帰国する気だった阿部仲麻呂もいる。中世になれば欧州や経由地とのやり取りもあり鉄砲・ねじ等の技術ももたらされた。さらに幕末・明治には欧米から「お雇い外国人」も招いており、発展した戦前の日本には孫文や周恩来も留学してきた。
 国を代表できる人物だけでなく「高度な技能」を持つ・求める人々が学ぶもの・教え伝える先があるから、また交易を目的とした移動は常にあったと言っていいだろう。
 そして「高度な技能」を受け入れる事とは反対に「安価な労働力」の送り出しとして、近代日本では満蒙・ハワイ・南米等への移民もあり、これは国単位で「雇用の調整弁」としての機能があったはずだ。
 話は戻って現代―。今まで送り出す事はあっても、この「外国人就労拡大」は逆に受け入れる事になるのではないだろうか?それによる影響は?国内の各産業における「労働力不足」は賃金を払えば解決する「安価な労働力不足」な面もないのだろうか?外国人を前提に労働市場が形成されたら、賃上げはさらに難しくなり「令和版所得倍増」は遠のくはずだ。
 そして彼ら(外国人)だって自分達の意思で来ているが、それは生まれ育った土地を離れてでも経済的豊かさといったメリットがあるはずで、逆にそれが無くなったら?豊かさを求めてきた人々は、豊かさが失われたら離れていくだろう。
 政権は後々まで外国人労働者の面倒を見切れるのか?責任を取れるのか?長期的視点でこの国を動かしているのだろうか?

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