EV化で進むファスナー技術

2021年12月6日

 EVシフトが想定以上に早く加速している。独大手の自動車メーカーは最も歴史のあるエンジン車の開発をやめて、2030年に電気自動車専業メーカーになるという。電池のセル工場などを作り5兆円超をEVに投資する。
 米EV大手の1月―9月の世界販売台数は前年同期の2倍に到達。四半期ベースでは過去最多を更新。大衆車寄りの小型車の販売が好調で、半導体不足の影響については、ソフトウェアを書き換えて代替品で対応したと説明している。
 国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、気候変動に対して多くの課題を残したまま先月に閉幕したが、自動車については2040年までに新車販売を全てEVなどのゼロエミッション車とする宣言を出した。この宣言は主要な自動車メーカーがある日米中は不参加だったものの、20数カ国が合意している。
 日本自動車工業会トップが「敵は炭素であり、内燃機関ではない」と発言して、EVだけが優遇される潮流に疑問を呈したが、この言葉通り、国内自動車メーカーは世界の流れよりも緩やかなEVシフト戦略をとってきた。一方で直近では新型のEVモデルが相次いで発表されている。商用車でも、国内メーカーがEVトラックを国内工場で量産することがわかった。先行する中国メーカーに対抗する動きと見られている。
 EV化で目立ち始めてきたのは軽量化に貢献するファスナー技術だ。これまで高強度ボルトなどが中心にあったが、バッテリーケースなどのアルミ鋼板に溶接レスで締結するクリンチングファスナーや、薄板同士を下穴レスで直接締め込むワンサイドファスナーやリベット技術も、先行する海外の採用実績を武器に各社が営業を本格化している。これまで鉄鋼を中心にしてきた自動車産業だが、軽合金や樹脂化も採用が進むことが予測され、これに対応したファスナー技術の開発も加速するだろう。こうした技術や製品を展開する商社の一部では、製品単体だけでなく、締結装置などユーザーの生産ラインに組み込まれるシステム全体のソリューションで営業展開を行っており、EV化の流れを商機ととらえている。
 内燃機関よりも構造がシンプルなEVでは、これまで進められてきたプラットフォームの共通化がより加速するのではないか。あるファスナー企業では、内製する樹脂成形金型のショット数が大幅に増えている傾向を指摘する。自動車各社が部品やユニットの共通化を目指している中で、点数減少などマイナスの懸念がある一方で、合理化策に貢献できるファスナー技術は成長分野としてプラスに捉えていくべき視点ではないだろうか。

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