下火状態のコロナ、第6波意識を

2021年10月25日

 緊急事態宣言が解除されてからそろそろ一月経つが、国内の感染状況は少々不気味なほど落ち着いている。現状一日当たりの新規感染者数は200人前後となっているが、これは変異株がまだ確認されていなかった第一波を下回る水準だ。減少の背景としてワクチンの普及などが挙げられているが根本的な理由については専門家も分かっていないという。
 巷では「冬になれば感染が再び拡大するのでは」と囁かれているが、しかし今のところデルタ株に続いて猛威を振るっている変異株の姿は確認されておらず、願わくはこのまま終息へ向かって欲しいものである。大手メディアが報じるところでは自動車メーカーの1社は11月から挽回生産に入るとのことで、年末の時期にコロナが再び感染爆発することになれば工場の稼働にも何かしらの影響が考えられるだろう。政府は「幽霊病床」の是正など次の感染拡大に向けた対応を始めているとのことだが、国内のモノづくりを止めないためにも多くの自宅療養者を出した第五派の対応について徹底的に検証すると共に今後の対応に活かしていくべきだ。
 鋼材市況と製品価格の問題についてもコロナと同じく引き続き注視が必要な状況が続いている。鋲螺業界では現在春先に続く二度目の価格改定の真っ最中といったところだが、ボルト・ナットに続いて小ねじなど幅広いアイテムに影響が及んでいる。企業によっては春先の価格改定もまだ完了できていない状態で二度目の値上げ要請が来てしまい、その対応に追われる形となっている。そんな中中国金融市場の動揺や、更に最近では高炉メーカーが鋼材価格の是正について極めて強気な姿勢を見せていることから先行き不透明感がより強まっている。少なくとも年内は鋼材市況そして中国市場の動向を細かく追う必要があるだろう。
 宣言解除以降特に都市部ではコロナ前を思わせる人の波が見られ、展示会や会合など対面で活動する機会も徐々に増えつつある。大阪・福岡・名古屋など各地の展示会を回っていると、出展社からは「コロナ禍前よりは少ないが、予想よりも来場者が多い」と前向きな声が聞かれるようになった。宣言は解除されたが他府県への積極的な移動について控える傾向が続く中、新規顧客の開拓はもとより既存顧客とのコミュニケーションの場としても機能しているようである。コロナ禍の中、ウェブ会議システムを活用する場面が増えた一方でオンライン展示会については既存のウェブ媒体との差別化を図るのが難しく、残念ながら前向きな評価はあまり聞こえてこない。情報の閲覧やリモートでの会話に留まらない人とモノの出会いの場となるオンライン空間の開発が待たれるところである。

バナー広告の募集

金属産業新聞のニュースサイトではバナー広告を募集しています。自社サイトや新製品、新サービスのアクセス向上に活用してみませんか。