機械の内製力が武器に

2021年10月18日

 ファスナーメーカーの中では、加工設備の内製力を活かした取組みが進んでいる。
 大手の一部では、かねてより設備の製造販売を行っているが、販売する機種も高機能化が進んでいる。ねじ締め機や部品検査装置などファスニングに関するあらゆる装置を製造販売するメーカーでは、ロボットを組み合わせた検査装置の新機種を発表した。同社のファスナー生産現場では、転造機や省力機器など自社で内製した設備が多く稼働している。ファスナーメーカーとしての知見が、締結システムやファスナーの検査装置の開発に活かされていることを言うまでもない。さらに最近では協働ロボット専用の締結システムを開発して親和性のとれたサードパーティ製品としてロボットメーカーより認定された。自動化が進む中で締結システムとロボットを組み合わせる事例が加速している。他社製システムと自社製システムを簡単につなげて使用できる仕組みは今後ますます重要になってくるはずだ。
 グループ傘下に加工機・省力設備メーカーをもつメーカーの生産拠点では、加工から検査までの各工程で内製機が多く活躍している。汎用性を高めた市販製品ではなく、自社の生産ラインに最適な専用機を柔軟に導入できることが内製力を持つメーカーの強みのひとつと言えるだろう。穴あけ機、検査装置、タップ機、放電加工機、転造盤―。自社の生産拠点で経験を積んだノウハウを活かして専用機の販売も行っている。同社では協力メーカー先にも、こうした専用機の販売を行うだけでなく、工程指導も含めた総合的な支援を行っている。こうして品質を高めた協力メーカー先からは完成品だけを納入してもらい、自社では専用の検査設備で品質保証をするといった好循環を構築した。
 カム式自動旋盤の部品供給やオーバーホールサービスを開始したメーカーもある。カム式自動旋盤は圧造ブランクの切削二次加工に使用され、加工スピードがCNC旋盤より圧倒的に速く、一部ファスナーメーカーや切削二次加工専門メーカーで長く使用されている機種がある。同社は事業を継続しない機械メーカーよりサービス事業を引き継ぎ、他機械メーカーとの協力により、部品供給、修理・メンテナンスサービスを行っている。同機種のユーザーでもある同社は、部品の加工や修理によって自社のノウハウも蓄積する。同事業によりカム機による切削二次加工分野の存続に努めながら、新事業として新たな需要を掘り起こす。このほかにも、自社の機械修理部門の技術を活かして、外部からの修理・メンテナンスサービス事業を開始する動きも一部メーカーで見られる。機械の内製力は今後も大きな武器になってくるだろう。

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