キャップ不足、輸入品の動向影響か

2021年10月4日

 連日のように鋼材価格に関する話題を見かけるようになっているが、鋲螺業界でも春先に続きこの秋口で再び価格改定の動きが出ている。製品及び企業各社によって事情は異なるだろうが、在阪大手ボルトメーカーの動きを見ていると標準六角ボルトについては2回(もしくは3回)の価格改定の結果キロ当たり50円程度の値上げとなっている模様である。ナットや小ねじといった他のねじ製品でも今年二度目の価格改定に向けて既に動き出しており、このうち小ねじについては関西の関連団体が11月からの値上げを目指す方針を打ち出している。少なくとも年末までは価格改定の話題及びその対応が続くのは間違いないだろう。また鋼材の値上げもさることながら鋼材の供給状況も依然としてタイトな状況が続いており、特殊鋼メーカーの関係筋からは「ローグレードの鋼種は生産を後回しにされているのでは」との観測も聞かれる。鋼材価格については高炉メーカーが自動車メーカーに対して強気の値上げ交渉を敢行したことが話題となったが高炉メーカー側からは「もう一段の是正を求める」との声が出ており、交渉の結果が国内製造業にもたらす影響は計り知れない。今後の動向が注目される。
 鋲螺業界に目をやると、在阪商社界隈では六角穴付きボルトの不足が顕著となっている模様だ。今年春先の時点でその兆候は既に見られ、当時はM3・M4といった細径サイズの製品を中心に品薄になっていたようだが現在ではより太いサイズも含めて欠品状態が続いているとのことである。しかしメーカーの一社に話を聞くと商社向けが著しく伸びている一方でユーザー向けではそこまで需要が伸びていないとのことだった。他方、六角穴付きボルトについては台湾メーカーの製品が国内代理店を通じて流通しているが関係者に話を聞くとここ数カ月出荷が遅れ、船積みの連絡を待つ状況が続いているとのことである。台湾はコロナ禍の影響を大きく受けずに済んだことから輸出産業を大きく伸ばしており、現在はコロナからの回復途上にある欧米そして中国向けの輸出が顕著となっている。フル生産に入っていたとして、日本向けを特別優先する理由はないだろう。もちろんこれらが全てではないだろうが、二つの話をまとめると輸入品の調達が難しくなっている状況を背景として商社筋から国内メーカーへの注文が増加していると読むことはできそうである。そしてメーカーからすれば輸入製品の供給状況が元に戻った際に国産品から再び輸入品へ切り替わると見るのあれば積極的な投資は考えにくい。いつまでこの状況が続くか先行き不透明であるが、当面は“キャップ不足”の状態が続きそうである。

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