持続可能性は環境だけ?

2021年9月20日

 ―デジタル化の加速、働き方やコミュニケーションのあり方など人々のライフスタイルが大きく変容し、改めて、人間らしい本当の豊かさとは何かが問われています。また、気候変動や生物多様性等の環境課題も、自然災害の多発や地球規模の感染症拡大といったかたちで、産業革命以降の人間社会、経済のあり方に警鐘を鳴らしはじめています。今こそ社会や経済の成長と自然の持続可能性が共生する社会を目指して、力強く歩みを進めていかなければなりません―。
 これは某総合酒類食品企業のHP上で記載されているトップメッセージの一部抜粋だ。
 しかし今月上旬にそのトップが所属している団体の公開オンライン会議において「ウィズコロナの時代に必要な経済社会変革について終身雇用や年功賃金制など従来型の日本の雇用モデルから脱却する必要性から、その具体策として45歳定年制を導入すれば、人材の成長産業への移動を促し、会社組織の新陳代謝を図れる」との意見があり話題となった。
 その後「45歳は節目で自分の人生を考えてみることは重要だ。スタートアップ企業に行こうとか、社会がいろんなオプションを提供できる仕組みを作るべきだ。〝首切り〟をするということでは全くない」と補足の説明はあった。
 奇しくもその企業は「人を幸せにする経営」「日本の経済に、日本のすべての働く人に、本当の活力を生み出すために、〝正しいことを、正しく行っている〟企業」に対する顕彰制度で3月に受賞しており、9月中旬には報告会が開催され、今回のテーマは「~SDGsとダイバーシティの観点を踏まえて~」だった。
 SDGsが提唱されて久しいが、これは環境についてのことだけでなく「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」「包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用を促進する」「持続可能な生産消費形態を確保する」―も項目にあり経済・雇用も持続可能性の定義に入っている。
 仮に10代後半から20代前半で就業し、30~20年間勤務して45歳で定年を迎えたとして、その後の生活が保障できる勤務先があるのか?もしくは早めのリタイアが可能なだけの収入が確保できるのか?従業員は定年後も人生を〝持続〟させなければならない。
 勿論、組織のトップとして従業員に対して非情の判断をしなければならないこともあるだろうが、安定かつ継続的に労働できる職場・制度を維持する気のない企業は気安くSDGsを語るべきでなく、持続可能にするべきは〝人と自然〟両方なはずだ。

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