リスクと向き合うイベント

2021年8月30日

 時評子の仕事柄、例年10月頃から地方自治体及び関連団体主催で製造業向け展示会が多くなる。昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で軒並み中止やオンライン展示会のみ開催となる事が多かったが、今年はリアル展示会も開催しそうだ。
 しかし開催されるからといって、現時点の拡大状況はウイルスのキャリアにならない、感染しない訳ではない。
 様々な展示会HPを閲覧すると来場者に対し注意喚起や協力の要請がしっかり表示され、主催者としては対策を行っている旨でアピールもされている。
 そしてオリンピックが閉幕し、パラリンピック開幕を控える8月下旬。日本国内で昨年1月に最初の感染者が確認されてから20カ月程=1年半以上経ち、民間企業が主催者となるBtoBの展示会は今までも開催されてきたが、BtoCの大規模音楽フェスが地方で開かれたり、都内自治体でもイベントが開催されだした。変異株の出現で感染リスクは高まりつつあるのとは逆に、開催するハードルは下がりつつある。
 「自粛疲れ」という言葉もメジャーになってきたが、日々の生活の為に仕事はする、しかし娯楽は禁止―では限界があり、たとえ正論だとしても人の感情はそう簡単にはいかない。
 そしてアーティストをはじめ娯楽産業に携わる業者にとっては「イベントこそが仕事」であり、他にも飲食業やサービス業といった産業の従事者を含め、日本国憲法第25条「国民の生存権、国の社会保障的義務」における「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」と「社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進」、さらに経済活動の自由とのせめぎあいでもある。
 また休業補償という「実=補償・給付金」の配布が偏りや滞っているのとは別に、政府・議員・官僚、さらには医療関係者・報道機関も会食等を行って規範を示せなくなり、オリンピック・パラリンピックはできても他のイベントは開催できない旨の要請ばかりでは「名=建前」が崩壊したといってもいい。
 この不平等感も原因のはずで、誰にでも一律で納得できるルールを定め、実践されていない事が問題なはずだ。
 話は戻り、実際のところ今秋は製造業向けの展示会は可能なのか?
 「安全安心」なゼロコロナは事実上不可能だろう。しかしノーリスク(完全に安全)は無理でもローリスク(比較的安全)にしなければならない。これは主催者や出展者に限らず来場者も同じだ。
 そしてリスクは疫病だけとは限らない。イベントに限らず日常の業務、そして生活において企業も家庭も個人も地域もリスクと向き合う必要がある。

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